
老後を安心して生活するために。40代になったら理解しておきたい、老後の生活費・必要資金
2019年に公表された金融庁の報告書によると、「老後30年を夫婦で不自由なく生活するために必要な金額は最低2,000万円」。この数字を見て、「そんなに!?」と焦りを感じる方も多いのではないでしょうか。
40代にとって、老後はそう遠い未来ではありません。そろそろ老後の生活費について具体的に考えておきたいところ。そこで今回は、老後に必要な生活費の具体例をご紹介します。ぜひこの機会に老後費用の捻出方法や資産形成についてじっくり考えてみてください。
「老後の30年で2,000万円必要」の根拠

前述した、金融庁による「老後30年で2,000万円必要」という報告は、総務省が2017年に実施した「家計調査」のデータ(以下)を根拠としています。
- 【夫が65歳以上、妻が60歳以上の無職世帯のケース】
- ・毎月の可処分所得(※2)が180,958円
- ・消費支出(※3)が235,477円
- つまり、毎月54,519円の赤字が出ていることに。この赤字分を埋めるには以下の金額が必要です。
- 「54,519円 × 12ヶ月 × 30年 = 19,626,840円(約2,000万円)」
- 老後30年を不自由なく暮らすには、可処分所得+2000万円が必要になる可能性が高いのです。
- (※2)
- 所得から健康保険料や税金などを引いた自由に使える金額
- (※3)
- 支出から健康保険料や税金などを除いた金額
- ※この数値はあくまでも平均であり、実際の所得はもらえる年金の種類によって異なります。
何にどのくらいかかる?老後の生活費の内訳

では、老後の生活において具体的にどのような支出が発生するのでしょうか。2019年に総務省が行った「家計調査」では、夫が65歳以上、妻が60歳以上の無職世帯のケースの毎月の消費支出は241,672円でした。以下がその内訳です。
- ・食費:69,439円
- ※食費は消費支出のうち30%近くに。このうち外食にかかる費用は6,731円。
- ・住居費:13,898円
- ※持ち家の場合は固定資産税や修繕費がかかる。賃貸住まいの場合は家賃が発生するので、もっと高額の出費に。
- ・光熱費、水道費:21,520円
- ※寒冷地では冬期の暖房費がかさむ。
- ・家具・家事・日用品:10,344円
- ※家具購入費用は少ないが、キッチンや洗濯用の日用品購入が大部分を占める。
- ・衣服など:6,194円
- ・保健医療:15,814円
- ・交通・通信:28,620円
- ※このうち通信費は9,241円。半分以上は自動車の維持費。
- ・教養娯楽:24,158円
- ※旅行費用が多くを占める。
このほかにも、高齢になると、どうしてもかさみがちになる費用項目もあります。
- ・入院手術費用
- 医療費の中でも、入院や手術するとなれば高額の負担が発生します。
- ・介護施設の費用
- 自力で生活が困難になった場合は、在宅介護サービスを受けたり介護施設を利用したりする可能性があります。
老後資金、不足分を補うためには早めの資産形成が◎

法改正により65歳まで働けるが、給料は下がる見通し
- 年金の支給が一部を除いて65歳に引き上げられたことに伴い、定年を65歳にする企業が増えています(2020年3月現在)。また、定年が65歳未満でも、高年齢者雇用安定法により、本人が希望すれば雇用を継続する法律も施行されました。
- このような状況であるため、65歳を過ぎても働くのは可能です。不足分を働いて稼ぐという選択肢も当然あります。しかし、65歳以上になると、以前よりも給料が下がる傾向が。また、職場で厚生年金に加入している場合は、給料の額に応じて厚生年金の一部または全部の支給が停止されます。
今から資産形成の方法を考えよう
- 老後の生活費の不足分は、退職金が支給されるのであれば穴埋めすることもできるでしょう。しかし、最近は支給されない企業も少なくありません。また、自営業の方の場合、退職金がないに等しい状況も考えられます。年金や退職金だけでは老後の資金が不足するということであれば、資産形成がおすすめです。40代なら、まだ資産形成する時間と余裕があります。
- 例えば、40歳から積立預金を始めて、毎月5万円を預けると、65歳には1,500万円+利息になります。同額を投資に回せば、2,000万円を超えることもあります。NISAやiDeCo、勤務先の財形貯蓄など、利息にかかる税金が優遇される制度もあります。ただし、投資は元本が保証されておらず、必ず増えるわけではありません。利用にあたっては、しっかりと仕組みを理解しましょう。
専門家に相談するのも手
- 老後資金について悩んでも、一人で解決するのは大変です。そんなときは、ファイナンシャルプランナーなど、お金の専門家に相談するとアドバイスしてくれるでしょう。独立しているファイナンシャルプランナーの中には、中立の立場でアドバイスをしてくれる人もいます。
40代の今から、老後資金について考えよう

老後を年金だけで過ごすのは難しいと言われる時代。
節約を心がけるのは大事ですが、支出を抑えるだけの生活は味気ないものになってしまいます。早いうちから老後資金を貯める、定年後の働き方を考えるなど、早めの計画が豊かな老後を過ごすためのカギとなるでしょう。