HOME > 生 活 > ライフスタイル > 男と香りの思い出

男と香りの思い出

2016/06/28

川崎貴子

リントス株式会社代表取締役

川崎貴子

女性マネージメントのプロ

匂いが運ぶ愛の記憶 香りには数多のドラマがある。

私は写真を一切撮らなかった。
生きるの死ぬのと大騒ぎした、人生で初めて「結婚したい」と願った大好きな彼とのそれは旅行で、場所も以前から行きたかった中東で、これが彼との最後の旅になるという予感が既にあったというのに。

 

当時28歳だった私は、「写真など結局手元に残らない」となぜかぼんやり思っていた節がある。案の定、しばらくしてその彼とは別れ、私は次の恋愛や結婚を機に昔の彼の写真を捨てたのでそれは正しかったのだが、私が写真を撮る必要が無かった本当の理由は、自分の記憶の中に彼との旅の全てを残しておける方法を他に知っていたからだった。

 

それから10年が過ぎて38歳になった私は、仕事と育児に追われる毎日を過ごしていた。忙しいけれど単調でもある生活。でも、それでいいのだ。ドラマティックな人生と安定した幸せはそもそも両立できないし、私は安定した幸せを取り、より幸せになる為に安定を強化してきた。望んだからこそ今がある。だから我が人生に悔いなし、である。

 

猛暑の記録が更新されていたある夏日。30代になってから何度目かのそんな反すうを終え、夕飯の支度用の買い物袋を両手に下げて交差点を渡ったその時、すれ違った見知らぬ男性から僅かなファーレンハイトの香りがした。28歳の時大好きだった彼が、あの旅行中にずっと付けていた香水である。そのすれ違い様のほんの数秒で私は、問答無用に10年前に引き戻される。アンカラの50度を超える気温が、市場の喧騒が、モスクの美しいタイルが、朝に鳴り響くコーランが、旅の間中ずっと笑顔だった彼が、お別れしたくなくて、引き裂かれそうだった私の気持ちが、容赦なくドラマティックに迫り来るのだった。

 

匂いが運ぶ愛の記憶におののきながら、でも、時を超えたからこそ解るお別れの意味やその後の人生が展開していったこと全てに感謝しかなく、私は再び前を向いて歩き出す。どうか彼も今、幸せでありますように、と勝手に願いながら。

 

・・・・・・・なーんちゃって。

 

長々とフィクションを書いてみましたが、所々はフィクションでも無く、独身時代はよく旅行中にカメラを持たずに香水を新調して出かけたものです。(今は子供がいるので撮りまくっておりますがw)そして、その香りを嗅ぐと、今でもありありとその旅行中の事を思い出せたり致します。

 

私は薄情者なので、元カレとばったり再会した時に彼のフルネームを忘れてたことがあるのですが、香りの記憶がある人だけは思い出せる自信があります。それは私が麻薬犬なみの嗅覚を持っているから、という訳でもなく、嗅覚から想起される記憶は、他の感覚器に比べて圧倒的に正確で、尚且つ情動的であると、心理学や神経科学の分野でも明らかになっているそうです。情動的だからこそ、恋愛の記憶に紐づきやすいのかもしれませんね。

 

最近は自然派志向と言いますか、なかなか「香る男」に出会えるチャンスがございません。私のような「香りフェチ女」にとって「良きかほりの男性」は実際より確実に2割増しに映ります。また、街で「いい男」には振り返りませんが、「良い匂いの男性」には思わず振り返ったりも致します。ところがここ15年ぐらいで街からだいぶ「香水をつけている男性」が減りました。振り返るチャンスがなかなか来ないので寂しい限り。

 

確かに、所かまわずバシャバシャ大量に付けていたり、清潔を保たない上でトッピングしてしまうと立派なスメルハラスメントになってしまいますので注意は必要です。ただ、40歳を超えた大人の男なら、そろそろTPOに合わせた香りをアクセントとしてまとえるお年頃なのではないでしょうか?鮨屋ではつけないとか、量を調節するとか、匂いの好みとか、付き合った過去の女性達の香りの記憶から学んでいる事が多い筈だからです。

 

香りにはドラマがあり、思い出があります。

 

男性らしい肉体も、仕立ての良いスーツも素敵だけれど、
大人の男が放つ色香の一つとして嗜まれてみてはいかがでしょうか?

このキュレーターの他の記事を読む

それはもしや、男の更年期障害なのでは?

2017/11/28

放置しておくと危険な「男の更年期障害」 最近、電車の中でイライラしている同胞や、疲れ切っている同胞を見ると、「それってもしや男の更年期障害なのでは?」と疑いの目で見ている私です。 &…

幸せのサイエンス

2017/10/27

中高年男性が最も幸せを感じていない、日本と言う国。 先日私は、慶応大学の日吉キャンパスに行ってまいりました。「女社長の乳癌日記」でお世話になっているウートピという媒体の企画で、「幸…

男が痴漢になる理由

2017/09/25

痴漢は依存症らしいです。 考えても解らない事は世の中にたくさんありますが、45年間生きてきて未ださっぱり理解できなかったのが、「痴漢」という犯罪とそれをやってしまう人、でした。「それ…

もし、妻が癌になったら・・・。

2017/08/28

今や2人に1人が罹る癌。パートナーが癌になった時の心の準備はできていますか? 先日、男性の個人カウンセリングで「癌になった妻とどう接して良いか解らない」という相談を受けました。聞けば…

だんなデスノート

2017/07/28

日本の夏の気温を3度は下げた「だんなデスノート」を知っていますか? この原稿を書いているのは7月も半ば。毎朝テレビを付ければ松居一代さんが夫である船越英一郎さんを捨て身のすっぴんで…

実は嫌がられている!気づいたら「話の長い男」になっていませんか?

2017/06/26

立場か?年齢か?男たちの話を長くする原因は何なのでしょうか? 私は、何が苦手って「長い話を聴くこと」が子供の頃から猛烈に苦手です。年齢的に結婚式に出席する機会も減り、仕事では自身で…

料理おじさんのススメ

2017/05/30

人に喜ばれる趣味って良くない? 先日、こんな記事を見つけて思わず笑いました。 https://twitter.com/tokoroten/status/818717458127163395/photo/1 男性が若者からおじさんになりハマる物達…

女性の体の事、知っていますか?

2017/04/24

大切な女性がいる全ての男性達へ 「女性の体」と申しましても、セックスにまつわる女体の話では残念ながらございません。昨晩、私は一般社団法人シンクパール主宰のイベント「女性からだ会議」…

40代男性こそ大事な「死に支度」

2017/03/27

もし、明日突然自分が死んでしまうとしたら、スマホや机の中に見られてまずいものはありませんか? 昨年末私は乳癌になり、右乳房を全摘出致しました。その顛末はこちら「女社長の乳癌日記vol.…

「結婚は墓場だ。」と既婚者が言ってはならない理由

2017/02/27

独身男性に出会いの無いジャパン 働き始めてからずっと、女性のキャリア支援や教育事業に特化してきた私ですが、最近、毎週末男性の話を聞いています。昨年11月からスタートした働く女性向け婚…

夫は何故妻に嫌われるのか?

2017/01/30

結婚生活が15年過ぎると、夫が嫌になる。 40代も半ばに差し掛かると、30歳で結婚した夫婦は結婚15年を迎えることになります。我が家は再婚で晩婚な為、共同生活を始めてちょうど10年、結婚9年…

男の色気の作り方

2016/12/28

よく質問されるのですが、男の色気ってなんなんでしょうね。 最近、独身男性と対談や面接をさせていただく機会が多いのですが、その際に一番されて困る質問が「男性の色気ってなんですか?」と…

女に捨てられる男、捨てられない男。

2016/11/28

夫婦の幸せの形は、夫婦の数だけあるのではないでしょうか?そして、その形は外部には解らない。私たちは世間に対して結構上手に「幸せそうな夫婦」を演じることができるから。 「金の切れ目が…

40代独身男性が、意中の女性を口説くには? 後編

2016/10/31

意中の彼女の好意を勝ち取る方法 前編では主に「心構え」を、中編では「気になる存在に昇格する方法」と、2か月に渡って中弛み気味の連載ですがとうとう最終回でございます。仕上げには、「意…

40代独身男性が、意中の女性を口説くには? 中編

2016/09/30

気になる存在に昇格する方法 前回、「40代独身男性が、意中の女性を口説くには?前編」として、心構え的な部分を書きました。   以前、私の家には入れ代わり立ち代わりモテ美女達が、酒を…

40代独身男性が、意中の女性を口説くには? 前編

2016/08/25

お相手がどんな若い美女でも、おじさんにはおじさんの戦い方がある 先日、40代独身男性Aさんの相談に乗りました。どうやら、「女性をどうやって口説くのか忘れてしまった。」とのこと。昔は出…

セクハラにならない話し方

2016/07/28

セクハラ認定されたら命取り。その一言がセクハラになります! パワハラ、マタハラ、モラハラ、リストラハラスメント・・・。ここ数年でたくさんのハラスメントが生まれた感があります。まぁ、元…

日本人はもうセックスしなくなるかもしれない

2016/05/31

子供を作る以外にセックスの意味などあるのだろうか? 40代ともなると、ついつい若者たちを憂いてしまいがちですよね。特に、昨今の若者の草食化や恋愛離れに関しては、「俺たちの若いころは~…

男が愛を表す時

2016/04/27

男が不器用でぶっきらぼうだということを、私は父親から教わった。 私はファザコンじゃありません。逆に、自分の恋愛対象や結婚相手を振り返ると、父と真逆な人ばかりに惹かれてきたように思い…

ミッドライフ・クライシス(中年の危機)は突然に!!

2016/03/23

45歳男性の二人に一人が陥るミッドライフ・クライシスとは? 私が40代に突入した途端、一番最初にガタが来たのが「視力」でした。 「急激にスマフォを使い出したから~」「書く仕事が増えたか…

40代が陥りがちな離婚の甘い誘惑

2016/02/23

「全く違う人生があるのではないか」と夢想してしまう「離婚」の誘惑。 以前のブログ「男40代に忍び寄る魔の時対処法」*https://40life.lucido.jp/article-29/で、新たに何かを始めるのにあた…

40代独身男性が結婚するためには

2016/01/30

大未婚時代に突入する前に 最近、立て続けに40代独身男性の婚活相談に乗る機会がありました。普通に収入があったり、イケメンだったり、コミュニケーションスキルが高かったりして、皆、結婚す…

恋の効能

2015/12/29

恋は遠い日の花火なのか 先日久しぶりに会った40代の友人(独身、女性)が、異常な程若返っており、おまけにとっーても綺麗になっていて久々に度肝を抜かれました。聞けば、「恋をしている。」…

中年の哀愁

2015/12/17

「なんで中年男性って・・・?」っていう記事を見つけて 先日、40代友人男性へのプレゼントを選ぶために、googleで検索しようとした時のことです。 「中年男性」と入れたら、上から何番目かに…

40男はもっと泣いていい

2015/10/24

イライラしたジジイにならない為に 突然ですが、私は「男泣き」が好きです。 特に、中高年男性の「男泣き」を見るとぐっとくるだけじゃなく、母性にも火を付けられ、「さぁ~♪眠りなさ~い~♪…

男40代に忍び寄る「魔の時」対処法

2015/09/26

不惑なんて嘘っぱち!40代特有の悩みや焦りを、どう乗り越えればいいのか。 SNSなどを拝見していると、誕生日を迎えて40代に突入した人の多くが「人生の折り返し地点」という言葉を使っていま…

大人の男とダイエット

2015/08/25

このサイトよりコラムのオファーをいただいた際に、私は迷わず「書きます!」とお答えしたのですが、それは読んで下さる対象が「40代」と伺ったからです。   40代男性―。零細企業を19年間…