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映画から学ぶヒーロー養成講座  ~かっこいい大人の男とは~

2016/11/24

牧口 じゅん

映画ライター

牧口 じゅん

通信社、映画祭事務局勤務、映画サイトの立ち上げを経て映画ラ…

「誰かの“永遠のヒーロー”であれ 『私の少女時代-OUR TIMES-』」

女性にとって、永遠のヒーローとは初恋の相手なのかもしれません。そんなことを思わせる、素敵な映画が台湾から届きました。「女性向きじゃないの?」とおっしゃらず、ぜひ観ていただきたい青春映画『私の少女時代-OUR TIMES-』です。

 

主人公は、少女時代に憧れていた理想の大人像とはかけ離れてしまった現実の自分に悩む、アラサー女性、真心(チェンシン)。仕事に追われ、おしゃれもデートもままなりません。ある夜、ラジオから流れる「君は今の自分が好き?」 という問いかけを機に、高校時代の自分を思い出します。90年代の人気アーティスト、アンディ・ラウに夢中になり、友達と恋の悩みを打ち明け合い、未来に希望を抱き何もかもが輝いていたあの頃、そしてあの人のことを。

 

台湾映画とはいえ、昭和を思わせる素朴な風景、演歌を彷彿させる台湾歌謡曲、ちょっとダサ目の髪形やファッションで、アジアならではのノスタルジックな世界観が見事に再現されていて、日本の大人たちの郷愁をも誘います。その中で展開するのが初恋の物語なのです。

 

高校時代、真心が淡い憧れを抱いていたのは、イケメンでスポーツ万能の優等生・非凡(フェイファン)でした。彼が学園のマドンナと仲良いことが発覚したことで、同志となったのが、マドンナに恋心を抱いている    学校一の不良・太宇(タイユィ)。利害が一致し行動を共にするうち、2人は互いの魅力に気づいていきます。

 

太宇が体現するのは、反骨精神旺盛で、昭和を思わせる不良。彼のよさは、思いきりカッコつけてつっぱっているところ。何があってもいい訳をせず、約束を必ず守る。そして、一度信頼した真心には心を開き、必要な時には力を惜しみなく貸してくれます。誰にでも優しかったり、誰にでも理解されたりする男子より、自分だけに心を開いてくれる人の方が特別な絆を意識するもの。自分だけを親身になって励ましてくれれば、ヒーロー性は増すばかりなのです。

 

太宇は制服の着方や髪型はもちろん、言動においても、かっこ悪いと思うことは決してしません。教師には 生意気に映る存在ですが、それは大人社会の都合ではなく独自の理論で動くから。高校生ながら、美学を持っている男と言えるでしょう。生き方としては不器用です。こういう美学は、成長し社会を知るにつれ貫き  にくくなるもの。それゆえ、恐れを知らぬ少年らしいつっぱりぶりが眩しく感じられるのです。成長した真心が勇気を必要としたとき、いつも励ましてくれた彼を思い出し、あらためて胸をときめかせたのも当然かもしれ ません。

今回つくづく感じたのは、誰かの初恋の相手だったということは、その人の大切な思い出の一部になること。誰かにとっての“永遠のヒーロー”であり続けるためにも、素敵な自分でありたいもの。自分が誰かの初恋の相手だったかどうかは、この際どうでもいいじゃないですか。そうだったかもしれないと思うだけでわくわくしてきます。 『私の少女時代-OUR TIMES-』は、そんなドキドキをくれる素敵な青春映画なのです。

■タイトル:『私の少女時代-OUR TIMES-』
■公開表記:2016年11月26日(土)より新宿武蔵野館他にて全国順次ロードショー
■配給表記:配給:ココロヲ・動かす・映画社 ○
■著作表記:(C)2015 Hualien Media Intl. Co., Ltd 、Spring Thunder Entertainment、Huace Pictures, Co., Ltd.、Focus Film Limited

 

ストーリー 300:
仕事も恋も上手くいかず、少女時代に思い描いていた未来とは、かけ離れた現在を生きるアラサーOL・林真心。何もかも嫌になった彼女が、ふと耳にしたラジオ番組からは、かつて大好きだったアンディ・ラウの歌声が流れていた。懐かしい音楽をきっかけに、純粋で夢にひたむきだった高校時代の日々が甦る。思い出すのは、きらきらと輝き、そして切なかった10代の頃に思い描いていた理想の自分、忘れられないひとりの少年――。あの頃の気持ちを取り戻し、もう一度輝きたい。そう考え始めた彼女を思いがけないサプライズが待っていた。

 

キャスト&スタッフ:
製作:イエ・ルーフェン、監督:フランキー・チェン
出演:ビビアン・ソン、ダレン・ワン、ディノ・リー/特別出演:アンディ・ラウ、ジョー・チェン、ジェリー・イェンほか

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