マインドセットを変える時が近づいている

インフレに勝つための資産運用

世の中にはさまざまなリスクが存在します。大きな問題では、中東や東アジアがきな臭くなっていることが挙げられます。今後30年以内に70%の確率で起こるとされるマグニチュード7クラスの首都圏直下型地震も大きなリスクの一つです。戦争や自然災害は個人にとってリスクをヘッジしにくいものですが、経済的な環境であれば、考えられるリスクをマネージすることはある程度可能です。その意味で、今の日本で経済的に考えられるリスクはやはり「インフレ」ということになるかもしれません。

 

バブルが弾けて以来、長い間、デフレに苦しんできた日本。日銀の黒田総裁が2013年に就任したとき物価上昇率2%と明言したにもかかわらず、安定的に物価が上昇するような状況は生まれていません。しかしこれまでの円安や原材料などの値上がりから、サラダオイルやティッシュペーパー、カップ麺などが値上げになっています。もしこれである程度のインフレが定着してくるということになれば、これまでのデフレマインドからインフレマインドに切り替えるときでしょう。

 

インフレになると、お金は時間の経過とともに減ってしまいます。現在の1万円と将来の1万円の価値が同じとは限りません。現金が100万円あっても、物価が2%上昇すれば、実質的な価値は2万円減ります。インフレ率が高くなればなるほど、お金の実質的な価値は目減りすることになります。現金を抱えているというのはデフレ経済の中では、安全策の一つになったかもしれませんが、インフレ経済になると現金を抱えているということそのものが大きなリスクになるのです。しかも銀行などに預けていても、ある程度の利息はつきますが、インフレ率を上回るほどの利息はつかないのが普通です。

 

もっとも、緩やかなインフレは経済にとって好ましいものでもあります。それは、「モノやサービスの値段が上がる⇒企業利益が増える⇒給料が上がる⇒お金を使う⇒企業利益が増える⇒給料が上がる」という好い循環が生まれることが期待されるからです。それに明日モノの値段が上がると分かっていれば、消費者は今日モノを買うかもしれません。もちろん、モノやサービスの値段が上がる時に給料も同じペースで上がっていかないと、人々の財布の紐は緩みません。安倍内閣が経済界に対して給料アップ(ベースアップやボーナスの増額)を要請してきたのはまさにそのためです。

 

そのような時代に変わるとしたら、皆さんも自分たちのマインドセットを変えなければなりません。インフレが中長期的にどれくらい大きなインパクトがあるのか、ちょっと計算してみましょう。たとえば物価が毎年3%ずつ上昇すると(すなわちインフレ率3%です)お金の価値はどうなるでしょうか。毎年3%ですから、たとえば100円のおにぎりは来年100円×1.03=103円になり、再来年は100円×1.03×1.03=106.09円になります。このような計算を「複利計算」と言います。これで計算していくと24年後にはおにぎりが200円になります。つまり物価は倍になり、お金の価値は半分になるということです。もちろんその間、収入も増えるでしょうが、もしお金をタンスにしまっていたり、利回りの低いところに預けたりすれば、大事な貯蓄は目減りすることになります。

 

そうしたリスクを避けるためには、やはりお金を年間3%以上の利回りで運用するしかありません。それが生活を防衛することにつながります。普通は運用というと、高い利回りは高いリスク(投資したお金が減ってしまう)、低い利回りは少ないリスク(たとえば一定の元金は保証されている銀行預金)ということが言えます。少しでも有利な運用をしながら、リスクをいかに小さくしていくか、それが資産運用の核です。

 

資産運用は富裕層のためだけのものではありません。皆さんの大切な資産を守るために必要なものです。日本がインフレ経済に移行するのなら、いま必要なことはデフレ経済に慣れた皆さんのマインドセットを変えることではないでしょうか。

一口メモ 〜複利計算に便利な「72の法則」とは?〜

72÷○%=□年

 

例えば○に7.2を入れてみます。すると□は10です。これは年間7.2%で複利計算すると、元本が2倍になるのに10年かかることを意味しています。「元本100万円は年間7.2%で複利計算すると10年間で200万円になる」と言い換えることができます。

 

今度は□に20を入れてみます。すると○は3.6です。これは20年間で元本を2倍にするためには年間3.6%で複利運用することが必要だということを意味しています。

野水 瑛介

野水 瑛介

マネックス・セゾン・バンガード投資顧問 取締役兼営業部長

慶応義塾大学経済学部卒業後、JPモルガン・アセット・マネジメントに入社。銀行や証券会社を担当する投資信託営業に従事。その後ロンドンオフィスに駐在しジャパンデスクとして東京オフィスとのリエゾン業務を担当。帰国後、当時最年少でチームマネージャーに就任。2016年2月にマネックス・セゾン・バンガード投資顧問に参画。「ゴールベースアプローチ」に基づき、「資産運用のあたりまえをあたりまえに」するべく、執筆や講演活動を展開中。