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これからジャズを聴いてみよう!という人に送る。超入門盤3枚

2017/06/23

渡部 晋也

舞台写真家、音楽ライター

渡部 晋也

ジャズから中南米やハワイの音楽。さらに日本の伝統音楽まで幅…

広大なジャズの世界も今年で100年。さて、どこから入ろうか?

もっともジャンルやスタイルに誕生日があるわけではないので、大概は初録音とか決定的なコンサートがあった年をその始まりとして数えることが多い。ジャズ100年も起点はジャズと記した商業レコードの初録音となっている。

 

そんなわけで100年。つまりは一世紀。この間にジャズという音楽は沢山の名曲、名プレイヤー、そして名盤を生み出してきた。それだけにこれからジャズを聴いてみよう、という人にとってはいったいどこから入っていけばいいのか悩むところだろう。そこで今回は“超”初心者向けの「初めての3枚」を筆者なりに選んでみたいと思う。

 

ワルツ・フォー・デビイ/ビル・エヴァンス・トリオ

ジャズファンからの「なにを今更」というあきれた声が届いてきそうだが、ともかく間違いない名作。ピアニスト、ビル・ヴァンスがスコット・ラファロ(ベース)、モール・モチアン(ドラム)と組んだトリオの1961年作品。バラードでは繊細に、テンポが速いナンバーでは小粋なフレーズに溢れたビルのピアノが素晴らしいのは万人が認めるところだが、ここで是非耳を傾けて欲しいのは、スコットのベース・プレイだ。

 

通常ピアノトリオの場合、ベース&ドラムがリズムを司り、ピアノが花形という形だが、スコットのベースは単に曲を支えるのではなく、実に自由なフレーズを繰り出していることに気がついて欲しい。さらにそれらのフレーズはピアノのフレーズに絶妙に呼応している。もちろんこうしたプレイは譜面で指示されているわけではなく、あくまでも即興で反応しているのだ。そしてベースほど顕著ではないけれど、ポールのドラムにも同じことがいえる。

 

つまりこれこそがジャズの即興性であり、お互いに呼応して音楽を作り上げるインタープレイの醍醐味だ。なお、スコット・ラファロはこの作品のレコーディングから数日後に、交通事故でこの世を去っている。そういったこともあり、貴重な一枚といえるだろう。

 

ワルツ・フォー・デビイ+4/ビル・エヴァンス UCCO-5551

 

クール・ストラッティン/ソニー・クラーク

ジャズはスタイリッシュで格好良くなくてはいけない。それは音楽の内容だけでなく、それを包み込む外装…つまりレコードジャケットのデザインにも通じるところだ。そういった意味でこのアルバムは特に秀でている。聴いたことがなくてもこのジャケットは知っているという人も少なくないだろう。

 

そしてタイトル曲の「クール・ストラッティン」。どことなく気だるい感じが漂うフレーズとそれに続くアドリブ・ソロにはジャズが本来持っている粋や洒落の精神が一杯に詰まっている。2曲目の「ブルー・マイナー」は昨年のNHK朝ドラマ「べっぴんさん」で、主人公の娘が熱を上げる相手がドラムを叩いてるバンドがもっぱら演奏していた曲。テーマの途中でリズムが4ビートからラテン・リズムに変化する楽しい曲だ。もっともこのアルバムは日本で特に売れたそうで、ジャズファンの中には辛口な評価をつける人もいるが、ここはあくまでも筆者のお薦めということでご理解いただきたい。

 

クール・ストラッティン+2/ソニー・クラーク UCCQ-9201

 

ジャンゴ/MJQ(モダン・ジャズ・カルテット)

モダン・ジャズ・カルテット。通称MJQは1952年に結成された四重奏。カルテットといえば普通サキソフォンやトランペットなどが前面に出ることが多いが、MJQの場合はミルト・ジャクソンのヴァィブラホンが加わるというユニークな編成だ。当初音楽的なリーダーシップを取ったのはミルトとピアニストのジョン・ルイスだったが、徐々にジョンが主導権を握るようになり、その影響でジョンが傾倒していたクラシックの影響が色濃く出るようになってくる。

 

それだけにMJQの演奏には、ジャズ特有のスリリングな雰囲気よりも、端正でエレガントな感覚を覚えることが多い。メンバーの演奏もやたらと音を繰り出してくるのではなく、研ぎ澄ました音が重なり合うことで無限の世界を紡ぎ出すような、「抑制の美学」とでもいうべき魅力がある。ちょっとジャズは荒っぽくって、などと思っている人には是非お薦めしたい。

 

そんなMJQが56年にリリースしたのがこのアルバム。代表作でもある「ジャンゴ」はジプシー・ジャズで大活躍したジャンゴ・ラインハルトに捧げた名曲。「ニューヨークの秋」「バット・ノット・フォー・ミー」「ワン・ベース・ヒット」の3曲以外は全てジョン・ルイスによるオリジナルだが、4楽章に分かれた「ラ・ロンド組曲」はメンバーそれぞれのソロをメインにおいたユニークな作品だ。

 

ジャンゴ/モダン・ジャズ・カルテット UCCO-5506

 

以上、あくまでも筆者の好みからお薦めを選んでみたが、それほど的は外していないと思う。なお、今回はイントルメンタルな(楽器だけの)演奏から選んでみた。ヴォーカル編はまた後日お送りしたい。

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