投信は初心者向けの商品か(その2)

投信の「コスト」とは?

投信にかかるコストには大きく分けて2種類あります。ひとつは「販売手数料」で、もうひとつは「信託報酬」です。前回触れたパッシブ型運用とアクティブ型運用のコストの違いは信託報酬の違いに起因します。

 

販売手数料は、お客様が投信を販売する会社(銀行や証券会社など)に支払うコストです。銀行や証券会社の側から見れば、販売手数料は「初期コンサルティング料」と言えるかもしれません。なお、販売手数料がない投信を「ノーロード投信」と呼びます。ネット証券やネット銀行を通じて投信を購入すると、初期コンサルティングがない分、「ノーロード投信」になるケースが多いです。

 

近年、販売会社を通さず、投信のメーカーである運用会社が直接お客様に販売する「直販会社」が台頭しています。例えば、レオスキャピタルワークス、セゾン投信、コモンズ投信などです。販売会社を通さない分だけコストが相対的に安いのが特徴です。これはいわゆる「中抜き」現象といわれるものです。

 

次に、信託報酬は、投信の3つの関係者(販売会社、運用会社、信託銀行)に支払うコストの総称です。「販売会社」は投信を販売して投信を売買する口座の管理をする会社、「運用会社」は運用のプロたるファンドマネージャーがいる投信のメーカー、「信託銀行」は投信の運用財産の保管・管理を行います。アクティブ型だと信託報酬が相対的に高く、パッシブ型だと信託報酬は安いというのは前回の記事の通りです。

 

具体例で説明します。販売手数料3%、信託報酬率年1.5%(内訳:販売会社取り分0.7%、運用会社取り分0.7%、信託銀行取り分0.1%)のアクティブ型投信を100万円購入した場合を考えます。

 

まず投信購入時に「初期コンサルティング料」として3万円を販売会社に支払います。信託報酬額は、投信の運用残高に信託報酬率1.5%(年率)を掛けて日々算出され、一日あたりの信託報酬額が日々の基準価額(投信の値段)から差し引かれて計算されます。投信を購入するときは、信託報酬額が差し引かれた基準価額で購入することになります。

 

具体例で信託報酬額を計算してみると、年間の運用残高が一定であると仮定すると、信託報酬額は合計で年間15,000円です。このうち、販売会社には「口座管理手数料等」として7,000円、運用会社には「投信製造料や運用のプロ雇い料等」として7,000円、信託銀行には「投信の保管・管理料等」として1,000円を支払っていることになります。

 

このように投信にかかるコストの内、販売会社には販売手数料と信託報酬の2つのコストを支払っているのです。販売会社が投信(特にアクティブ型投信)を個人投資家に強く勧めるのは、このような手数料体系が背景にあるからかもしれません。

コストの差は結果に大きく影響する

前回の記事で、投信はいわば「パッケージ商品」なので、どういった個別商品を買えばいいか分からない投資初心者向きの商品と紹介しました。しかし、投信自体の種類が多いので、自分のニーズをしっかり理解し、それに合わせて選ぶ必要があります。迷った時には、「コスト」を意識してみるのがいいかもしれません。なぜならコストを削減することで「複利効果」を最大限に活かすことできるからです。リターンを予想することは極めて難しいですが、コストは確実に削減することができます。

※マネックス・セゾン・バンガード投資顧問が独自に作成

 

上の図は、1986年に100だったものが、30年後の2016年にいくらになっているかをグラフ化したものです。オレンジの線は、毎年4%複利で増えた場合を表しており、100は30年後に324になっています。一方、グレーの線は、毎年3%複利で増えた場合で、30年後に243になっています。年率1%というわずかの違いでも、30年間という長期で考えるとこれだけ差が出ます。このグラフが示唆しているのは、「1%分のコストを削減できれば、その分だけリターンは大きくなる。わずかでもコストを削減すれば、リターンに貢献する」ということです。コスト削減の重要性があらためて分かります。

 

ただし、コストは自分がどのようなリターンを求めて、何に対して支払うかという観点からも評価しなければなりません。優れたファンドマネージャーに対してならば、高いコストを支払っても、大きなリターンを期待することができます。支払うコストが安いから良い投信、高いから悪い投信と単純に言うことはできません。

野水 瑛介

野水 瑛介

マネックス・セゾン・バンガード投資顧問 取締役兼営業部長

慶応義塾大学経済学部卒業後、JPモルガン・アセット・マネジメントに入社。銀行や証券会社を担当する投資信託営業に従事。その後ロンドンオフィスに駐在しジャパンデスクとして東京オフィスとのリエゾン業務を担当。帰国後、当時最年少でチームマネージャーに就任。2016年2月にマネックス・セゾン・バンガード投資顧問に参画。「ゴールベースアプローチ」に基づき、「資産運用のあたりまえをあたりまえに」するべく、執筆や講演活動を展開中。