だんなデスノート

日本の夏の気温を3度は下げた「だんなデスノート」を知っていますか?

この原稿を書いているのは7月も半ば。毎朝テレビを付ければ松居一代さんが夫である船越英一郎さんを捨て身のすっぴんで罵っている暑い夏ですが、40’s Lifeの旦那衆に置かれましてはいかがお過ごしでしょうか?

 

最近では、「だんなデスノート」なんて言うサイトまで流行していて、「夫、許さない」「夫死んでくれ」という書き込みが花盛りです。方や夫達の検索履歴上位は「嫁 かわいい」だったりなんかして、その温度差に悲しみが止まらないのであります。私もだんなデスノートは読んでみたのですがひどい夫が多すぎて、また、妻の呪詛も濃すぎて「もう離婚しなよ!」と、涙目で3回ぐらい叫びました。

 

私もバツイチの身の上、彼女達の心情を経験したことが無い訳ではありません。ま、そこまで行く前に別れたというのが本当の所なんですが、子供やお金の問題で別れたくても別れられない妻たちが日本に相当数存在するという事が書き込みからよく解ります。また、心から夫に死んでほしいと思っている妻から、書くことで溜飲を下げている妻まで、マグマレベルはきっとそれぞれであることでしょう。ただ、私がこのサイトを見て一番気になった点は、「書かれている夫たちは、妻にこんなにも憎まれている事を知っているのであろうか?」という所でした。

 

先日、2名続けて男性の個人カウンセリングをしたのですが、相談者さんの内、1名は妻と離婚をしたいAさん(51歳)、もう一名は妻から離婚を切り出されているがやり直したいBさん(46歳)でした。二人は真逆の結果を求めて私の所へやってきた訳ですが、大きな共通点が二つありました。一つは「夫婦仲が冷え切っている」という事。もう一つは、「夫が妻の事を恐ろしい程何も知らない」という事です。「奥さんが日頃楽しみにしている事はなんですか?」と質問をしても、「よくわからない」とか「付き合った頃は〇〇が好きでした」などと、15年前の思い出を出してくる始末です。これでは、どうして離婚に応じてくれないかも、どうして考え直してくれないかも解らない為戦略が立てられません。

 

私も離婚する前そうでしたが、妻は夫への耐えがたき不満を、夫の「聞くことができそうな」タイミングを計り、具体的に且つ継続的に提示しません。勇気を持って一回でも話してみた結果、「今忙しいから」などと夫に言われたら「二度と言うまい」と心も口も閉ざして恨みを醸造します。押しなべて夫たちは言います。「不満があるのなら言えばいいのに。」と。しかし、妻たちは雄弁に語っているつもりなのです。先に寝てしまう事で、無表情で「おはよう」という事で、業務連絡みたいなラインを送る事で、ベッドですぐに背中を向ける事で、大きな音を立てて家事をする事で、ため息を何度もつくことで、あなたにはもう何の興味もないという視線で、「どうしてあなたはそうなの?どうして私達、こんな風になってしまったの?」と、もう何年も前から語りかけているのです。

 

「女が一度嫌いになったら終わり」とよく言われますが、事は独身時代の恋愛ではありません。子供、親族、生活、地域、職場や子供の学校、財産などなど、離婚したら問題は山積みです。ですから、本当に離婚したい訳ではないのです。できるなら夫婦仲良く、助け合いながら生きていきたい、でも、相手のせいでそれができないと思っているから、あれだけだんなデスノートに書き込むのだと思います。ですから、どんなに冷え切った夫婦でも、どちらかが立ち上がれば関係修復できる可能性を大いに秘めているのです。

 

それにはまず、今までの態度を詫び、相手の今をよく知る事であり、コミュニケーションを一から取る事が重要で、これを夫側が徹底した事により夫婦仲を改善させたケースを私はいくつも知っています。また、「うちはそこまでじゃないが・・・。」という予備軍の皆様も、一度「だんなデスノート」を覗きに行ってみてはいかがでしょうか?世間の妻は何を持ってして夫が憎いのか?が具体的に解って大変勉強になります。(読後に心が寒くなるので涼を取る事もできます。)

 

最後に、かつて誰かの結婚式で聴いた詩を掲載させてください。私は2回目こそ失敗しないようにと、再婚してほぼ10年、いつもこの詩を心に携帯して夫とやってきたように思います。今夫婦仲が上手く行っている人も上手く行っていない人も、結婚したばかりの人も、これから結婚する人も、今生ご縁があっての伴侶が、人生で唯一無二の存在になりますように。そして、生きているなつかしさに、二人で胸を熱くできますように。

「祝婚歌」 吉野弘

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派過ぎないほうがいい
立派過ぎることは
長持ちしないことだと
気づいているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうち どちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気づいているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には色目を使わず
ゆったりゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そしてなぜ 胸が熱くなるのか
黙っていてもふたりには
わかるのであってほしい

川崎貴子

川崎貴子

リントス株式会社代表取締役

リントス株式会社代表取締役。1997年に女性に特化した人材コンサルティング会社ジョヤンテを設立後、1万人を超える女性をフォローしてきた。「女性マネージメントのプロ」との異名を取る。メディア取材執筆多数。婚活結社「魔女のサバト」、共働き推奨 婚活サイト「キャリ婚」(https://carricon.jp 男性完全無料)主宰。 著書に『我がおっぱいに未練なし』(https://www.amazon.co.jp/dp/4479783997 大和書房)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(http://www.amazon.co.jp/dp/4584136335 ベストセラーズ)、『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(https://www.amazon.co.jp/dp/4062729458 講談社) 、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(https://www.amazon.co.jp/dp/4862804829 総合法令出版)、『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(http://www.amazon.co.jp/dp/447979493X 大和書房)、『上司の頭はまる見え。』(http://www.amazon.co.jp/dp/476319707X サンマーク出版)がある。ブログ「酒と泪と女と女」など連載も多数。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザー。