2015.08.18

ビジネス
ガンダムに学んだ“リアル”

 

8月8日から、上野の森美術館で『メカニックデザイナー 大河原邦男展』が開催されます。アラフォー世代にとって、大河原邦男という名はピッカピカに輝く大看板。『科学忍者隊ガッチャマン』、タイムボカンシリーズなど数々の名作アニメでメカデザインを担当された方です。

 

最大の代表作はといえば、やはり『機動戦士ガンダム』でしょう。本作に登場するのは“ロボット”ではなく“モビルスーツ”。物語の背景も、それまでよくあった“地球を侵略する悪者”との闘いではなく、正義も悪もない「1年戦争」です。

 

モビルスーツは戦争に使う兵器であり、現代の戦車や戦闘機と同様の扱い。だから毎回、違う敵メカが出てくるのではなく、同じモビルスーツが何機も出てくるわけです。第1話に登場するジオン軍のモビルスーツ『ザク』は“量産型”でした。僕たちは“量産”という言葉をガンダムで覚えたりもしました。

 

モビルスーツの模型“ガンプラ”も大ヒット。作品から離れ、実在の兵器のようなカラーリングや所属部隊名などのマーキングを施した“リアルタイプ”のガンプラも登場したほどで、それだけ本物感のあるメカでした。そういえば“リアル”という言葉も、ガンダムで覚えた気がします。

 

いやガンダムはメカだけじゃなく作品全体がリアルでした。主人公アムロは(最初は)どこにでもいる気弱な少年で、スネたりひねくれたりもする。登場人物が次々と戦死していく非情さもガンダムの特徴。アムロの兄貴分リュウ、憧れの人マチルダ中尉、敵キャラながら大人の魅力たっぷりだったランバ・ラル……。

 

感情移入したと思ったら消えていく登場人物たちに「これが戦争ってものなんだよなぁ」とタメ息をついたものです。名キャラ・スレッガー中尉のセリフで言うなら「悲しいけどこれ戦争なのよね」。沁みましたねあのセリフは。再放送で見た当時、10歳くらいでしたけど。

 

そう、『機動戦士ガンダム』は、そろそろ自意識みたいなものが芽生え始めてきたあの頃の僕たちに“背伸び”をさせてくれるアニメでした。ガンダムを見ていろんな言葉を学び、大人の世界をちょっと知った気になって。だから、もう背伸びなんてする必要がない大人になった今でも、ガンダムのことが忘れられないんでしょう。

橋本宗洋

橋本宗洋

フリーライター

1972年、茨城県生まれ。格闘技、プロレスなどを中心に執筆。たまに書籍の編集や映画の取材も。アイドルのライブに行ったり深夜ラジオ聴いたりで、好きなものが中学生の頃からあんまり変わってない40代。