もし、妻が癌になったら・・・。

今や2人に1人が罹る癌。パートナーが癌になった時の心の準備はできていますか?

先日、男性の個人カウンセリングで「癌になった妻とどう接して良いか解らない」という相談を受けました。聞けば癌を告知されてからの妻の、感情の起伏が激しすぎて、どんな言葉をかけても地雷を踏んでしまうのだとか。

 

昨年乳癌の手術をし、現在ホルモン治療中の私と健常な夫は、まさにそのお悩みと同時進行で模索しているところ。

 

また、癌という病は、今や二人に一人が罹ると言われている大変ポピュラーな病気です。誰しもが当事者になりえるだけじゃなく、妻やパートナーが罹る可能性も高い訳ですから、この課題はシェアさせていただきたいとご本人に了解を得て今したためている次第です。

 

確かに、私が乳癌を発表してからと言うもの、同じ乳癌の妻たちから「夫に不安な感情をぶつけてしまう」「夫と二人になると毎晩泣いてしまう」「夫が私の気持ちを解ってくれない」というような相談がいくつも舞い込んできました。手術入院中に同室だった女性(同じく乳癌、推定50代半ば)も、彼女の夫がお見舞いに来るたびに夫に当たり散らしていたものでした。

 

また、私は乳癌ブログ(*乳癌に罹った女性が書いているブログ)をかなりの数読んで参考にしていたのですが、中では夫に「癌になった理由」を見出してしまう人もいて、「私が癌になったのは全て夫のせい。夫のストレスのせいで癌になった。だから、私は夫に全て言ってやった。」と、少し前までは惚気ていた程だったのに一夜にして豹変する様に、彼女の闘病の苦しさや感情の行き場の無さをリアルに見る思いがしました。

 

私のケースで言えば、癌告知を受けた際、ある程度準備万端で臨んだので感情の乱れはあまりありませんでした。(*詳しくは「女社長の乳癌日記vol.1」をご一読ください。)乳癌ブログで学習していたことだし、そもそも理不尽な感情をダイレクトにぶつけるのは、例え夫と言えども性に合わないし、告知後の生活も普段と変わらずに過ごしていたように思います。

 

ところが、あれは私の手術から2週間後の事。お見舞いに来てくれた夫が、もうすぐ退院間近だというのに私の着替えやタオルを多めに持ってきたのです。私は、「こんなに一人で持って帰れないよ・・・。」とクレームをつけました。退院時は一人で何もかも持ち帰る予定だったからです。

 

そうしたら、いつも穏やかな夫が「じゃあいい!全部持って帰るよ!」と、突然怒り出すではありませんか。その時私は、「はああああああ?」と言いながら、「なんで、癌でもないお前が怒るんだよ!」と、思ったのでした。理不尽な感情だと今なら解りますが、その時は全身の毛を逆立てるように、はっきりとそう思いました。そして、「これが被害者意識なのか」とも。

 

私の場合、当日の日記が記しているように「癌になったのは私の自業自得」と思う所が大きかった筈。なのに夫にだけはどこかで「ケアされて当たり前」だと思っていたのでしょう。だからクレームもつけたし、私は被害者なのに!と夫の態度に腹が立ったのだと思います。夫は加害者でもなんでもない、むしろ冷静に見れば夫こそが被害者だというのに。

 

一瞬で我に返った夫はすぐに謝ってくれて、私も謝り、それは一瞬の出来事で喧嘩にはならなかったのですが、私は前述した理由から完全に見落としていました。夫がひどく疲れている事を。私のケースは手術するまで癌のステージも解らなかったので、夫こそ実はずっと不安だったのです。しかし、それを私の前では出せるはずもありません。当事者の方が不安は大きいと思うからです。

 

また、私が2週間も入院していたので、普段の仕事に加えて家の事や子供たちのケア、私の見舞いと、気力や体力も相当消耗させていたのです。同時に私も長い入院生活でイライラを募らせていました。

 

地雷は人によって、夫婦によって様々ですが、パートナーのどちらかが大病をした際に気を付けなければいけないのは、余裕が無さ過ぎて相手への想像力が欠如する事だと私は思っています。

 

病人の方は私が全身の毛を逆立てたように、手負いの獣よろしく普段の余裕を無くします。ですから健常の方が頑張る訳ですが、むしろ、受け止める側が余裕を得るために自分自身をケアする必要があるのです。(*ちなみに我々カウンセラーも、クライアントの相談に乗りながら定期的に自分自身がカウンセリングを受けます。安定した状態をキープしなければならないからです。)

 

特に男性は友人に愚痴ったり、カウンセリングを利用したりする事に抵抗を覚えている人が多い。妻の不安や愚痴を聞き、地雷を踏まないように言葉を選び、通常業務をこなした上で妻の分も家事や育児をこなす・・・。妻のインフルエンザが治るまでだったらできると思いますが、癌は長丁場。そんなことを何年も続けるのは無理です。

 

また、家事や育児も、「これは有事」と思って、この際手伝ってもらえる人には甘えましょう!昨今、「ワンオペ育児」が問題視されていますが、介護が必要な老人がいる家庭も、病人がいる家庭も同じです。無理にワンオペでやろうとすればどこかに必ず歪が生まれます。

 

妻に対しては、できる限り病院で先生の話を一緒に聞いてあげてください。癌は治療方法含めて患者自身の決断の連続です。死や再発の恐怖、手術や治療の恐怖から治療に前向きになれない人も多く、「夫が一緒に聞いて一緒に判断してくれたら心強い」と思う妻は多いのです。

 

そして、癌を罹患した妻が夫に望むのは、「気持ちに寄り添ってくれること」だと私は思います。私自身が夫に、癌になった事を伝えた時に夫は涙ぐんでいました。私はその時、「乳癌プロジェクト」と意気込んでいたので悲しみも恐怖も感じていなかったのですが、夫が私の代わりに泣いてくれたのだと思うと一人で罹患した孤独は一気に吹き飛びました。

 

共に考え、共感し、気持ちに寄り添ってくれる伴侶が傍にいてくれる事で、前向きに治療に臨み、生きる活力を見出せるという事を私は今回経験することができました。そして、結婚式の際の「病める時も健やかなる時も」を実践してくれた夫に心からの感謝と尊敬を抱くようになりました。

 

夫の皆様におかれましては、いつそんな時がやってきても大丈夫なように、頼れるライフラインの確保やご自身のケアやストレス解消法など、今から備えていても無駄にはならないかと。

 

そして、癌は早期発見が重要だとこの度思い知ったので、40代ならばご夫婦で確認しあって検診に行かれる事や、奥様に「行きつけの婦人科を持つ提案をする」などを最後にお勧めして筆を置きたいと思います。

川崎貴子

川崎貴子

リントス株式会社代表取締役

リントス株式会社代表取締役。1997年に女性に特化した人材コンサルティング会社ジョヤンテを設立後、1万人を超える女性をフォローしてきた。「女性マネージメントのプロ」との異名を取る。メディア取材執筆多数。婚活結社「魔女のサバト」、共働き推奨 婚活サイト「キャリ婚」(https://carricon.jp 男性完全無料)主宰。 著書に『我がおっぱいに未練なし』(https://www.amazon.co.jp/dp/4479783997 大和書房)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(http://www.amazon.co.jp/dp/4584136335 ベストセラーズ)、『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(https://www.amazon.co.jp/dp/4062729458 講談社) 、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(https://www.amazon.co.jp/dp/4862804829 総合法令出版)、『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(http://www.amazon.co.jp/dp/447979493X 大和書房)、『上司の頭はまる見え。』(http://www.amazon.co.jp/dp/476319707X サンマーク出版)がある。ブログ「酒と泪と女と女」など連載も多数。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザー。