人口トレンドが経済成長予測のカギ

トレンドとサイクル

株式、原油、金、コメ、ほぼどんなモノやサービスにも価格(値段)がついています。そして、価格は需要と供給のバランスなどさまざまな要因で高くなったり、安くなったりします。このような価格の動きは、大きく2つに分けることができます。それは、「トレンド」と「サイクル」です。「トレンド」とは長期的・マクロ的な値動きのことであり、反対に、「サイクル」とは短期的・ミクロ的な値動きのことです。この2つの違いを説明したイメージ図が以下です。

短期的サイクルを予測することは、その道のプロにとっても至難の業です。しかし、国の経済成長などの長期的トレンドはある程度予測することができます。経済成長の長期的トレンドを考える上で最も重要なのは「人口動態」だということが一般的に知られています。人口動態とは、長期にわたる人口の増減のことです。

減る日本人、増えるアメリカ人

以下のグラフは、1950年の人口を「100」とした時に、日本とアメリカの人口が2016年までにどのように変化したのかを表しています。日本は、1990年代から人口の増え方が次第に緩やかになり、2008年には遂に人口が減少し始めています。それに対してアメリカは一貫して人口が増加しています。日本をはじめとした先進国は総じて「人口減少社会」に突入していますが、アメリカは「人口増加社会」なのです。同じ先進国でも人口のトレンドは全く違います。

出所:OECD.Statのデータベースよりマネックス・セゾン・バンガード投資顧問株式会社が作成

生産年齢人口と従属人口

1970年以降の日本の経済規模(名目GDP)と人口動態を比較したのが以下のグラフです。日本の経済規模は人口と同じように、1990年代から鈍化のトレンドをたどっていることが分かります。日本が戦後から奇跡的な経済成長を遂げ、世界第2位の経済規模まで登り詰めた背景には、人口増加というトレンドがありました。

出所:OECD.Statのデータベースよりマネックス・セゾン・バンガード投資顧問株式会社が作成

一方、アメリカについて見たのが以下のグラフです。1970年以降のアメリカの経済規模(名目GDP)はリーマンショックの影響を受けた2009年を除き、一貫して成長していることが分かります。日本と違ってアメリカ経済が持続的に成長している背景には、人口増加トレンドがあります。

出所:OECD.Statのデータベースよりマネックス・セゾン・バンガード投資顧問株式会社が作成

人口ボーナスと人口オーナス

人口動態と経済成長の関係性を考える上では、「人口ボーナス期」も重要な指標です。人口ボーナス期とは、子供と高齢者(これを合わせて「従属人口」と呼びます)の数に比べて、働く世代(「生産年齢人口」と呼ばれ15~64歳の人々です)の割合が増えていくことによって経済成長が後押しされる期間のことです。以下のグラフは、1950年から2050年までの日本、アメリカ、中国そしてインドの「生産年齢人口」と「従属人口」の割合の推移を表しています。

出所:UNITED NATIONS DESA / POPULATION DIVISIONよりマネックス・セゾン・バンガード投資顧問株式会社が作成

 

日本は1955年から急激に上昇し、1965年には2倍を超えました。つまり養われる人々の2倍以上の人たちが生産年齢にいたということです。そして2000年ぐらいまで高かったのです。この期間が日本の「人口ボーナス期」であり、この頃の日本の高い経済成長を支えた原動力です。分かりやすく言えば、従属人口(子供と高齢者)の割合が低かったため、稼いだお金を消費に回す余裕があったということです。一方で、1995年あたりを境にこの傾向が変わっていきます。従属年齢人口が生産年齢人口に比べて増えてきということです。このトレンドは高齢化のさらなる進行に伴い、ますます加速していくことが予想されています。こうなると人口ボーナス期と真逆の現象、すなわち従属人口のほうが生産年齢人口より多くなることが予測されます。こうなると消費に回す余裕がなくなります。これを「人口オーナス期」と呼びます。オーナス(onus)とは、負荷・負担と言う意味です。日本は現在、人口オーナス期に入っており、人口動態から見る限り長期的に高い経済成長は見込めません。

 

一方、アメリカの特徴は、日本のように2倍の水準を超える期間はほとんどないものの、1950年から2010年まで比較的安定して推移している点です。2015年以降は下降トレンドではあるものの、その下降スピードは日本よりも緩やかになると予想されています。これがアメリカ経済が今後も底堅く成長すると考えられる理由です。もちろんアメリカでもいわゆるベビーブーマー世代が高齢化し、その介護や医療の負担が問題になっています。トランプ政権がいわゆる「オバマ・ケア」を廃止しようとしているのは、その負担が大きすぎると考えているからです。

 

中国については1975年から生産年齢人口の割合が増え、2000年には2倍の水準を超えて2010年にピークをつけました。ここで人口ボーナス期が終わったことになります。その後は加速度的に減少トレンドに入っていくことが予想されています。今後の中国経済は、2000年代のような高成長を維持することができず、急速に低成長国になっていく可能性を示唆しています。つまり中国は内需の増加による成長をあまり期待できなくなるということが考えられるのです。

 

最後にインドについては、2020年に2倍の水準を突破し、2040年のピークを迎えると予想されています。インドはまさにこれから人口ボーナス期を迎え、「経済成長はこれからの国」と言えます。

 

このように人口動態に注目することで、これから高い経済成長を遂げる可能性がある国を見つけることができます。注目すべきは、東南アジア、南米、そして特にアフリカなどの新興国地域になるでしょう。もっとも、人口動態がすべてを決めると考えるのは、少し悲観的かつ短絡的過ぎるかもしれません。例えば、生産性を劇的に向上させる、あるいは世界の在り方すら一変させるような「イノベーション」(技術革新)や、外部環境に関わらず企業を成長させることができる「プロ経営者」の存在によって日本も急激に減る人口の衝撃を少しでも和らげることができるかもしれません。

野水 瑛介

野水 瑛介

マネックス・セゾン・バンガード投資顧問 取締役兼営業部長

慶応義塾大学経済学部卒業後、JPモルガン・アセット・マネジメントに入社。銀行や証券会社を担当する投資信託営業に従事。その後ロンドンオフィスに駐在しジャパンデスクとして東京オフィスとのリエゾン業務を担当。帰国後、当時最年少でチームマネージャーに就任。2016年2月にマネックス・セゾン・バンガード投資顧問に参画。「ゴールベースアプローチ」に基づき、「資産運用のあたりまえをあたりまえに」するべく、執筆や講演活動を展開中。