HOME > 社 会 > コミュニケーション > 男が痴漢になる理由

男が痴漢になる理由

2017/09/25

川崎貴子

リントス株式会社代表取締役

川崎貴子

女性マネージメントのプロ

痴漢は依存症らしいです。

考えても解らない事は世の中にたくさんありますが、45年間生きてきて未ださっぱり理解できなかったのが、「痴漢」という犯罪とそれをやってしまう人、でした。「それは私が女性(一応)だから」というのも勿論あるのですが、欲求が解らない者から見ても「痴漢という犯罪」は、リスクとリターンの割が合わないと思うからです。被害者にとっては最低最悪な犯罪行為ですが、加害者に取っても見つかったら実刑を食らう、高額な示談金を払う、会社にバレて免職、家族にバレて一家離散、と、今まで築いてきたあらゆるものを当たり前ですが失います。そんなに触りたければ男性には風俗だってあるし、そのようなシチュエーションのAVもたくさんある筈。見ず知らずの女性を恐怖に陥れ、傷つけて、自分も全てを無くすというハイリスクな犯罪を男たちは何故繰り返すのか?

 

先日、「男が痴漢になる理由」斉藤章佳(イーストプレス)という本をいただいて、私のその積年の疑問が一気に晴れました。本著は「痴漢再犯防止プログラム」を立ち上げた著者が書いた、日本で多分初めて「痴漢」について専門的に書かれた本です。多くの事例を読むうちに、何故日本で年間1800件も痴漢が発生し、逮捕されても1年以内に再犯してしまうのか?がうっすら、というかずっしりと解ってしまいます。そして、私が痴漢に抱いていた印象も根底から覆されたのでした。

四大卒、会社員、妻子あり

私が抱いていた痴漢はずっと、若い人なら「非モテ」、中年以降なら「家庭が上手く行っていない」という男性像(女性もいるそうですが全体の0.2%だそうです)でした。ところが、性犯罪者と多くかかわってきた著者は、「性犯罪者のほとんどはどこにでもいる普通の男性です。特に痴漢は、両親から愛情を注がれ何不自由なく育ち、4年生大学を卒業して就職し、結婚して子供もいる、どこにでもいる良きお父さん」で、「家族も同僚も、彼が毎日電車で女性を傷つけているなんて夢にも思えない、平凡な男性」それが典型的な痴漢パーソナリティだと書いています。身体的な特徴も無ければ、ただでさえ狭い電車内などで、女性は自衛することなど不可能です。

 

そんな普通のお父さんが、どうして痴漢になってしまうのか?どうして再犯率が高いのか?をいくつかまとめてみました。

1. 優越感を得たいから

社会や家庭から抑圧を受けていると感じていて、「いじめ」のように女性を傷つけ、優越感を得たいから。そもそも自尊心が低い。

2. 男尊女卑の考え

自分が生きづらいと感じているから「性」を使って女性を支配、コントロールしたいと思っている。男女間のジェンダー差が大きい国ほど性犯罪が多いそうだが、「CHIKAN大国ニッポン」と世界から認知されている日本は、根強く男性の「加害者性」「男尊女卑思想」が存在しており、痴漢に手を染める男性はその傾向が強い。

3. ストレス対処法が貧困

こまめにコミュニケーションを取ってストレス発散ができる女性に比べて、他者に相談するスキルが無いし、ストレスを解消する術が無い。結果孤立し、痴漢が唯一のストレス解消法になり、ひどい人だと毎日のように繰り返してしまう。

4. 認知の歪みがハンパない

「痴漢をしてもOKな女がいる」「嫌がっているけど次第に喜ぶようになる」「女性の性欲を満たすために俺が触ってやってるんだ」って、ふざけるなーーー!!
これは全て痴漢たちが痴漢をやり続けるための、あまりにもご都合主義な認知だが、見事な歪みっぷりである。

5. 被害者の存在を忘れる

裁判所で反省したり謝罪したりしても、罪の意識が芽生えたのは「逮捕された」からであり、被害者の苦しみに4の事情から共感ができない。だから再犯する。

 

などなど、本著にはほかにもたくさん事例が乗っておりましたが、どれも「これは再犯するわ・・・。」と絶望するものばかりでした。彼らは痴漢と言う行為を通じて非日常を味わい、ストレス解消をしている訳ですが、被害者の苦しみを一切解ろうとしていないからです。殺人や窃盗のように何か目に見えるものを奪われるものは犯罪だけれど、「痴漢は何も奪っていない」というきっと認識なのですね。長い事刑罰も軽かったし、そもそも4の思考なので被害女性の苦しみを想像しろという方が難しいのかもしれませんが、2mぐらいの屈強な男から毎日体をホールドされてまさぐられるぐらいの経験を、彼らに心からお見舞いしたいものです。

痴漢に遭った女性達

私は学生時代、埼京線という「魔の痴漢電車」で通学していたのですが、痴漢に遭ったことはありません。「遭ったら大騒ぎしてやる!」と鼻息が荒かったので、その鼻息が彼らに届いていたからでしょうか。しかし、私より身長が低くて大人し目な同級生たちは毎日のように遭っていてよく落ち込んでいました。そして、しばらくしてその内の一人が突然学校を辞めました。電車に乗るのが怖くなり、通学が厳しくなったからだと担任から説明がありましたが、加害者の男は当然見つかりません。その後の事は知らないのですが、ちゃんと転校して、電車にも乗れるようになっている事を祈るばかりです。

 

彼女以外にも痴漢にあって男性恐怖症になったり、夜道があるけなくなったり、恐怖心とトラウマを抱える女性は多く存在します。勇気を持って訴えても、「そんな薄着をしているから」とか「短いスカートを履いているから」と、駅や警察や裁判所などでセカンドレイプな発言を浴びせられた女性達も同様に。それでも痴漢は「何も奪わない犯罪」でしょうか?

痴漢撲滅の為に社会ができること

痴漢を繰り返すのが「依存症」であるのならば、治療する施設があるということを先ず周知させる事は大切なんだと本著を読んで思いました。また、著者が前書きで書いている「痴漢に生まれてくる男性はいません。痴漢になりたくて生まれてきた男性もいません。彼らは社会の中で、自ら痴漢になるのです。」という当たり前且つ強烈な訴えを前に、悪いのは絶対に痴漢個人だけれども、社会が変化すれば撲滅できる犯罪なのではないかと思うに至りました。長時間労働を撤廃したり、時間差勤務を導入する事で、仕事や通勤ストレスを軽減させるという事も有効だと思います。

 

また、本著の最後に「痴漢を見ず、冤罪に怯える男性達」という章では、痴漢問題と冤罪問題を同じテーブルに乗せ、乗り合わせた男性達の積極的な関与を阻むような議論になることが問題だと書かれていました。ただでさえ、恐怖と羞恥でフリーズし、冤罪だったら、突き飛ばされたらどうしようと不安だらけの被害者女性に「更に勇気を出せ!通報しろ!」というのは無理がありすぎます。痴漢遭ったら押すボタンの設置も良いですが、スマホから流せる「痴漢に遭っているお知らせ音」みたいなものを開発し、「私の真後ろです!」とか「今その手に傷付けました!」など音声が選べ、それが鳴ったら車内一丸となって捕まえる、ぐらいの連携が必要ではないかと。

 

そして、40’s Lifeな皆様におかれましては、これ以上被害者を増やさないためにも、いざとなったら是非その捕り物帳にご参加いただきたいとお願いしたい次第であります。

このキュレーターの他の記事を読む

幸せのサイエンス

2017/10/27

中高年男性が最も幸せを感じていない、日本と言う国。 先日私は、慶応大学の日吉キャンパスに行ってまいりました。「女社長の乳癌日記」でお世話になっているウートピという媒体の企画で、「幸…

もし、妻が癌になったら・・・。

2017/08/28

今や2人に1人が罹る癌。パートナーが癌になった時の心の準備はできていますか? 先日、男性の個人カウンセリングで「癌になった妻とどう接して良いか解らない」という相談を受けました。聞けば…

だんなデスノート

2017/07/28

日本の夏の気温を3度は下げた「だんなデスノート」を知っていますか? この原稿を書いているのは7月も半ば。毎朝テレビを付ければ松居一代さんが夫である船越英一郎さんを捨て身のすっぴんで…

実は嫌がられている!気づいたら「話の長い男」になっていませんか?

2017/06/26

立場か?年齢か?男たちの話を長くする原因は何なのでしょうか? 私は、何が苦手って「長い話を聴くこと」が子供の頃から猛烈に苦手です。年齢的に結婚式に出席する機会も減り、仕事では自身で…

料理おじさんのススメ

2017/05/30

人に喜ばれる趣味って良くない? 先日、こんな記事を見つけて思わず笑いました。 https://twitter.com/tokoroten/status/818717458127163395/photo/1 男性が若者からおじさんになりハマる物達…

女性の体の事、知っていますか?

2017/04/24

大切な女性がいる全ての男性達へ 「女性の体」と申しましても、セックスにまつわる女体の話では残念ながらございません。昨晩、私は一般社団法人シンクパール主宰のイベント「女性からだ会議」…

40代男性こそ大事な「死に支度」

2017/03/27

もし、明日突然自分が死んでしまうとしたら、スマホや机の中に見られてまずいものはありませんか? 昨年末私は乳癌になり、右乳房を全摘出致しました。その顛末はこちら「女社長の乳癌日記vol.…

「結婚は墓場だ。」と既婚者が言ってはならない理由

2017/02/27

独身男性に出会いの無いジャパン 働き始めてからずっと、女性のキャリア支援や教育事業に特化してきた私ですが、最近、毎週末男性の話を聞いています。昨年11月からスタートした働く女性向け婚…

夫は何故妻に嫌われるのか?

2017/01/30

結婚生活が15年過ぎると、夫が嫌になる。 40代も半ばに差し掛かると、30歳で結婚した夫婦は結婚15年を迎えることになります。我が家は再婚で晩婚な為、共同生活を始めてちょうど10年、結婚9年…

男の色気の作り方

2016/12/28

よく質問されるのですが、男の色気ってなんなんでしょうね。 最近、独身男性と対談や面接をさせていただく機会が多いのですが、その際に一番されて困る質問が「男性の色気ってなんですか?」と…

女に捨てられる男、捨てられない男。

2016/11/28

夫婦の幸せの形は、夫婦の数だけあるのではないでしょうか?そして、その形は外部には解らない。私たちは世間に対して結構上手に「幸せそうな夫婦」を演じることができるから。 「金の切れ目が…

40代独身男性が、意中の女性を口説くには? 後編

2016/10/31

意中の彼女の好意を勝ち取る方法 前編では主に「心構え」を、中編では「気になる存在に昇格する方法」と、2か月に渡って中弛み気味の連載ですがとうとう最終回でございます。仕上げには、「意…

40代独身男性が、意中の女性を口説くには? 中編

2016/09/30

気になる存在に昇格する方法 前回、「40代独身男性が、意中の女性を口説くには?前編」として、心構え的な部分を書きました。   以前、私の家には入れ代わり立ち代わりモテ美女達が、酒を…

40代独身男性が、意中の女性を口説くには? 前編

2016/08/25

お相手がどんな若い美女でも、おじさんにはおじさんの戦い方がある 先日、40代独身男性Aさんの相談に乗りました。どうやら、「女性をどうやって口説くのか忘れてしまった。」とのこと。昔は出…

セクハラにならない話し方

2016/07/28

セクハラ認定されたら命取り。その一言がセクハラになります! パワハラ、マタハラ、モラハラ、リストラハラスメント・・・。ここ数年でたくさんのハラスメントが生まれた感があります。まぁ、元…

男と香りの思い出

2016/06/28

匂いが運ぶ愛の記憶 香りには数多のドラマがある。 私は写真を一切撮らなかった。生きるの死ぬのと大騒ぎした、人生で初めて「結婚したい」と願った大好きな彼とのそれは旅行で、場所も以前か…

日本人はもうセックスしなくなるかもしれない

2016/05/31

子供を作る以外にセックスの意味などあるのだろうか? 40代ともなると、ついつい若者たちを憂いてしまいがちですよね。特に、昨今の若者の草食化や恋愛離れに関しては、「俺たちの若いころは~…

男が愛を表す時

2016/04/27

男が不器用でぶっきらぼうだということを、私は父親から教わった。 私はファザコンじゃありません。逆に、自分の恋愛対象や結婚相手を振り返ると、父と真逆な人ばかりに惹かれてきたように思い…

ミッドライフ・クライシス(中年の危機)は突然に!!

2016/03/23

45歳男性の二人に一人が陥るミッドライフ・クライシスとは? 私が40代に突入した途端、一番最初にガタが来たのが「視力」でした。 「急激にスマフォを使い出したから~」「書く仕事が増えたか…

40代が陥りがちな離婚の甘い誘惑

2016/02/23

「全く違う人生があるのではないか」と夢想してしまう「離婚」の誘惑。 以前のブログ「男40代に忍び寄る魔の時対処法」*https://40life.lucido.jp/article-29/で、新たに何かを始めるのにあた…

40代独身男性が結婚するためには

2016/01/30

大未婚時代に突入する前に 最近、立て続けに40代独身男性の婚活相談に乗る機会がありました。普通に収入があったり、イケメンだったり、コミュニケーションスキルが高かったりして、皆、結婚す…

恋の効能

2015/12/29

恋は遠い日の花火なのか 先日久しぶりに会った40代の友人(独身、女性)が、異常な程若返っており、おまけにとっーても綺麗になっていて久々に度肝を抜かれました。聞けば、「恋をしている。」…

中年の哀愁

2015/12/17

「なんで中年男性って・・・?」っていう記事を見つけて 先日、40代友人男性へのプレゼントを選ぶために、googleで検索しようとした時のことです。 「中年男性」と入れたら、上から何番目かに…

40男はもっと泣いていい

2015/10/24

イライラしたジジイにならない為に 突然ですが、私は「男泣き」が好きです。 特に、中高年男性の「男泣き」を見るとぐっとくるだけじゃなく、母性にも火を付けられ、「さぁ~♪眠りなさ~い~♪…

男40代に忍び寄る「魔の時」対処法

2015/09/26

不惑なんて嘘っぱち!40代特有の悩みや焦りを、どう乗り越えればいいのか。 SNSなどを拝見していると、誕生日を迎えて40代に突入した人の多くが「人生の折り返し地点」という言葉を使っていま…

大人の男とダイエット

2015/08/25

このサイトよりコラムのオファーをいただいた際に、私は迷わず「書きます!」とお答えしたのですが、それは読んで下さる対象が「40代」と伺ったからです。   40代男性―。零細企業を19年間…