男が痴漢になる理由

痴漢は依存症らしいです。

考えても解らない事は世の中にたくさんありますが、45年間生きてきて未ださっぱり理解できなかったのが、「痴漢」という犯罪とそれをやってしまう人、でした。「それは私が女性(一応)だから」というのも勿論あるのですが、欲求が解らない者から見ても「痴漢という犯罪」は、リスクとリターンの割が合わないと思うからです。被害者にとっては最低最悪な犯罪行為ですが、加害者に取っても見つかったら実刑を食らう、高額な示談金を払う、会社にバレて免職、家族にバレて一家離散、と、今まで築いてきたあらゆるものを当たり前ですが失います。そんなに触りたければ男性には風俗だってあるし、そのようなシチュエーションのAVもたくさんある筈。見ず知らずの女性を恐怖に陥れ、傷つけて、自分も全てを無くすというハイリスクな犯罪を男たちは何故繰り返すのか?

 

先日、「男が痴漢になる理由」斉藤章佳(イーストプレス)という本をいただいて、私のその積年の疑問が一気に晴れました。本著は「痴漢再犯防止プログラム」を立ち上げた著者が書いた、日本で多分初めて「痴漢」について専門的に書かれた本です。多くの事例を読むうちに、何故日本で年間1800件も痴漢が発生し、逮捕されても1年以内に再犯してしまうのか?がうっすら、というかずっしりと解ってしまいます。そして、私が痴漢に抱いていた印象も根底から覆されたのでした。

四大卒、会社員、妻子あり

私が抱いていた痴漢はずっと、若い人なら「非モテ」、中年以降なら「家庭が上手く行っていない」という男性像(女性もいるそうですが全体の0.2%だそうです)でした。ところが、性犯罪者と多くかかわってきた著者は、「性犯罪者のほとんどはどこにでもいる普通の男性です。特に痴漢は、両親から愛情を注がれ何不自由なく育ち、4年生大学を卒業して就職し、結婚して子供もいる、どこにでもいる良きお父さん」で、「家族も同僚も、彼が毎日電車で女性を傷つけているなんて夢にも思えない、平凡な男性」それが典型的な痴漢パーソナリティだと書いています。身体的な特徴も無ければ、ただでさえ狭い電車内などで、女性は自衛することなど不可能です。

 

そんな普通のお父さんが、どうして痴漢になってしまうのか?どうして再犯率が高いのか?をいくつかまとめてみました。

1. 優越感を得たいから

社会や家庭から抑圧を受けていると感じていて、「いじめ」のように女性を傷つけ、優越感を得たいから。そもそも自尊心が低い。

2. 男尊女卑の考え

自分が生きづらいと感じているから「性」を使って女性を支配、コントロールしたいと思っている。男女間のジェンダー差が大きい国ほど性犯罪が多いそうだが、「CHIKAN大国ニッポン」と世界から認知されている日本は、根強く男性の「加害者性」「男尊女卑思想」が存在しており、痴漢に手を染める男性はその傾向が強い。

3. ストレス対処法が貧困

こまめにコミュニケーションを取ってストレス発散ができる女性に比べて、他者に相談するスキルが無いし、ストレスを解消する術が無い。結果孤立し、痴漢が唯一のストレス解消法になり、ひどい人だと毎日のように繰り返してしまう。

4. 認知の歪みがハンパない

「痴漢をしてもOKな女がいる」「嫌がっているけど次第に喜ぶようになる」「女性の性欲を満たすために俺が触ってやってるんだ」って、ふざけるなーーー!!
これは全て痴漢たちが痴漢をやり続けるための、あまりにもご都合主義な認知だが、見事な歪みっぷりである。

5. 被害者の存在を忘れる

裁判所で反省したり謝罪したりしても、罪の意識が芽生えたのは「逮捕された」からであり、被害者の苦しみに4の事情から共感ができない。だから再犯する。

 

などなど、本著にはほかにもたくさん事例が乗っておりましたが、どれも「これは再犯するわ・・・。」と絶望するものばかりでした。彼らは痴漢と言う行為を通じて非日常を味わい、ストレス解消をしている訳ですが、被害者の苦しみを一切解ろうとしていないからです。殺人や窃盗のように何か目に見えるものを奪われるものは犯罪だけれど、「痴漢は何も奪っていない」というきっと認識なのですね。長い事刑罰も軽かったし、そもそも4の思考なので被害女性の苦しみを想像しろという方が難しいのかもしれませんが、2mぐらいの屈強な男から毎日体をホールドされてまさぐられるぐらいの経験を、彼らに心からお見舞いしたいものです。

痴漢に遭った女性達

私は学生時代、埼京線という「魔の痴漢電車」で通学していたのですが、痴漢に遭ったことはありません。「遭ったら大騒ぎしてやる!」と鼻息が荒かったので、その鼻息が彼らに届いていたからでしょうか。しかし、私より身長が低くて大人し目な同級生たちは毎日のように遭っていてよく落ち込んでいました。そして、しばらくしてその内の一人が突然学校を辞めました。電車に乗るのが怖くなり、通学が厳しくなったからだと担任から説明がありましたが、加害者の男は当然見つかりません。その後の事は知らないのですが、ちゃんと転校して、電車にも乗れるようになっている事を祈るばかりです。

 

彼女以外にも痴漢にあって男性恐怖症になったり、夜道があるけなくなったり、恐怖心とトラウマを抱える女性は多く存在します。勇気を持って訴えても、「そんな薄着をしているから」とか「短いスカートを履いているから」と、駅や警察や裁判所などでセカンドレイプな発言を浴びせられた女性達も同様に。それでも痴漢は「何も奪わない犯罪」でしょうか?

痴漢撲滅の為に社会ができること

痴漢を繰り返すのが「依存症」であるのならば、治療する施設があるということを先ず周知させる事は大切なんだと本著を読んで思いました。また、著者が前書きで書いている「痴漢に生まれてくる男性はいません。痴漢になりたくて生まれてきた男性もいません。彼らは社会の中で、自ら痴漢になるのです。」という当たり前且つ強烈な訴えを前に、悪いのは絶対に痴漢個人だけれども、社会が変化すれば撲滅できる犯罪なのではないかと思うに至りました。長時間労働を撤廃したり、時間差勤務を導入する事で、仕事や通勤ストレスを軽減させるという事も有効だと思います。

 

また、本著の最後に「痴漢を見ず、冤罪に怯える男性達」という章では、痴漢問題と冤罪問題を同じテーブルに乗せ、乗り合わせた男性達の積極的な関与を阻むような議論になることが問題だと書かれていました。ただでさえ、恐怖と羞恥でフリーズし、冤罪だったら、突き飛ばされたらどうしようと不安だらけの被害者女性に「更に勇気を出せ!通報しろ!」というのは無理がありすぎます。痴漢遭ったら押すボタンの設置も良いですが、スマホから流せる「痴漢に遭っているお知らせ音」みたいなものを開発し、「私の真後ろです!」とか「今その手に傷付けました!」など音声が選べ、それが鳴ったら車内一丸となって捕まえる、ぐらいの連携が必要ではないかと。

 

そして、40’s Lifeな皆様におかれましては、これ以上被害者を増やさないためにも、いざとなったら是非その捕り物帳にご参加いただきたいとお願いしたい次第であります。

川崎貴子

川崎貴子

リントス株式会社代表取締役

リントス株式会社代表取締役。1997年に女性に特化した人材コンサルティング会社ジョヤンテを設立後、1万人を超える女性をフォローしてきた。「女性マネージメントのプロ」との異名を取る。メディア取材執筆多数。婚活結社「魔女のサバト」、共働き推奨 婚活サイト「キャリ婚」(https://carricon.jp 男性完全無料)主宰。 著書に『我がおっぱいに未練なし』(https://www.amazon.co.jp/dp/4479783997 大和書房)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(http://www.amazon.co.jp/dp/4584136335 ベストセラーズ)、『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(https://www.amazon.co.jp/dp/4062729458 講談社) 、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(https://www.amazon.co.jp/dp/4862804829 総合法令出版)、『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(http://www.amazon.co.jp/dp/447979493X 大和書房)、『上司の頭はまる見え。』(http://www.amazon.co.jp/dp/476319707X サンマーク出版)がある。ブログ「酒と泪と女と女」など連載も多数。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザー。