若い人こそたっぷり持っている資産

お金がないから投資できない?

これだけ株高が報道され、金融庁も「貯蓄から投資へ」と声高に叫び、投資信託などの金融商品の営業が盛んになされているにもかかわらず、日本人にとって「投資」はいまだに縁遠い存在のようです。直近の日本の家計の金融資産構成を見ると、未だに半分以上が現預金です。株式/債券/投資信託など元本が保証されない金融商品は、全体の約15%を占めているに過ぎません。残りはほとんど保険です。これとは対照的にアメリカでは、半分以上がリスク性資産(株式/債券/投資信託など)であり、保険が約30%、残りが現預金です。

 

「なぜ投資をしないのか?」というアンケートをとると、だいたいの相場は決まっていて、「よくわからない」や「損をするのが怖い」という回答が上位にきます。そして、特に多いのが「投資に回すお金がない」です。確かに富裕層や生活に余裕のある高齢者はともかく、現役バリバリで働いている世代(現役世代)にとって投資はなかなか敷居が高いものです。住宅ローンを抱えていて、子育ても真っ盛り、ライフステージのなかでも特に支出が多い時期だからです。「投資に回せるお金の余裕はない」というのは本音なのだろうと思います。しかしこれからの時代、本当にそれでいいのでしょうか。

「時間」も資産のひとつ

これからの日本では、国の年金制度や企業の退職金を当てにするのは難しくなると考えておいたほうが無難でしょう。「学校を卒業⇒社会人になる⇒結婚⇒子育て+マイホーム購入⇒ローン返済のため定年まで働く⇒余生は退職金や年金で生活」というこれまでの「普通の人生モデル」を歩める人はごく一握りになるかもしれません。年金支給開始年齢は引き上げられて、定年も延長され、長く働き続けることは当たり前になっていきます。国から支給される年金額だけでは足りなくなることも十分に考えられるでしょう。その意味で、自分で投資して資産形成していくことが今まで以上に重要になってきます。

 

ライフステージとして構造的に支出が多い現役世代は、確かにお金の余裕がありませんが、実はとても貴重な資産を持っています。それは「時間」です。この「時間」を味方につけることができれば、大きな武器になってくれます。

お金を長く働かせる

たとえば、将来期待される年率リターンが4%程度、リスク(変動性)が年率に換算すると7%程度の金融商品(国内外の株式や債券を組み合わせもの)があったとします。あくまでも統計的手法による計算上の推定値ですが、この金融商品に100万円投資すると、年率リターンは4%なので1年後には104万円になることが期待され、年率リスクは7%なので、少し複雑な計算になりますが、振れ幅はすごくうまくいくケースで118万円、かなり悪いケースで90万円になってしまうイメージです。ここで2つのケースを考えてみます。

 

1. 3年間にわたって毎月1万円を拠出することを考えます。積立貯金した場合はほぼゼロ金利の現状を考えると36万円にしかなりませんが、上記の金融商品に投資すると、シミュレーション上では、3年後には約38万円になることが期待され、期待を上回る場合は45万円程度、期待を大きく下回る場合では33万円程度になると計算されます。つまり、投資することで何もしないよりも約2万円資産を増やすことが期待でき、うまくいけばさらに約7万円上乗せすることが期待できます。一方で、うまくいかない場合は約3万円の損失が発生する可能性があります。

※マネックス・セゾン・バンガード投資顧問が提供するロボアドバイザーサービス「MSV LIFE」のシミュレーション画面より抜粋したもの。

 

2. 今度は30年間にわたって毎月1万円を拠出することを考えます。ほぼ30年ゼロ金利が続くとして積立貯金した場合は360万円になります。しかし上記の金融商品に投資すると、シミュレーション上では、30年後には約620万円になることが期待され、期待を上回る場合は900万円程度、期待を大きく下回る場合では350万円程度になると計算されます。つまり、投資することで約260万円資産が増え、うまくいけば約540万円も増えることが期待できます。一方で、うまくいかない場合は約10万円の損失が発生する可能性があります。ここで1)のケースと比較すると、明らかに「増える可能性がある金額」と「減る可能性がある金額」のバランスが魅力的なことが分かります。

※マネックス・セゾン・バンガード投資顧問が提供するロボアドバイザーサービス「MSV LIFE」のシミュレーション画面より抜粋したもの。

 

この2つのケースの比較から示唆されるのは、「なるべく長期で積立投資することで、拠出総額を下回ってしまう可能性を抑えつつ、資産を増やすチャンスを高めることができる」ということです。3年間積立投資できる人より30年間積立投資できる人のほうがこのチャンスが大きいのです。まさに「お金を長く働かせること」が重要ということです。

人生100年時代の幕開け

今年話題になっている、リンダ・グラットン教授の『ライフ・シフト~100年時代の人生戦略』によれば、いま20歳の人の平均寿命は100歳で、いま40歳の人の平均寿命は95歳になるとのことです。65歳まで働いても30年以上も生きる可能性があるということです。65歳以降は働かないということはなかなか難しくなるでしょう。だからこそ、「時間」という資産がある比較的若い時から将来に向けて準備することが重要なのではないでしょうか。

野水 瑛介

野水 瑛介

マネックス・セゾン・バンガード投資顧問 取締役兼営業部長

慶応義塾大学経済学部卒業後、JPモルガン・アセット・マネジメントに入社。銀行や証券会社を担当する投資信託営業に従事。その後ロンドンオフィスに駐在しジャパンデスクとして東京オフィスとのリエゾン業務を担当。帰国後、当時最年少でチームマネージャーに就任。2016年2月にマネックス・セゾン・バンガード投資顧問に参画。「ゴールベースアプローチ」に基づき、「資産運用のあたりまえをあたりまえに」するべく、執筆や講演活動を展開中。