【FPロングインタビュー】将来が不安な40代必見。ゼロからはじめる老後の資金対策

老後のための資産をどれくらい準備すべきかーーそんなことを現実的に考え始める40代。
同時に、40代は子どもの教育費・住宅購入など、大きな出費が重なる時期でもあります。

「今から老後の資産準備をしたとして、果たして定年までに間に合うのだろうか」
「これだけ出費が続いているなか、もう遅いのでは」

と不安を感じている方もいるかもしれません。しかし、心配は無用です。老後の資金対策は、気がついたときがはじめどき。40代からでも、準備の時間はまだ残されています。

本記事では、老後に焦らない・後悔しないための資金対策について、ファイナンシャルプランナーとして老後資金設計のコンサルティングも手掛けている、独立ファイナンシャルプランナー事務所「LBプランニング」の中野敦成氏に語っていただきました。

中野敦成

2005年4月から独立ファイナンシャルプランナー事務所LBプランニングを開設。ファイナンシャルプランナーとして、生活設計のアドバイス、コンサルティングを行っている。資産運用方面では、近代セールス、BIGLOBEマネー、大阪市信用金庫などでの執筆や労働組合、FP向け勉強会での講師を務める。

老後資金の必要額を考える「4つのステップ」

【前提】まずは老後“まで”に必要な支出を考える

老後資金を検討する前に、まず考えるべきことがあります。それは老後“まで”に必要な費用についてです。
たとえばお子さまがいる方は、その進学に伴う教育費が必要になるかもしれません。働いているうちに住宅ローンの返済を終えたい方は、繰り上げ返済の費用がかかる可能性も。「ご両親の介護費用をサポートしたい」という声もあります。まずは、老後までに必要な支出をチェックして、その準備を優先するようにしましょう。

老後資金を考える4つのステップ

老後までにかかる大きな支出を計算したうえで、以下の4つのステップで老後に必要な資金を考えます。

  •  ※4つのステップ
  • 1. 予想できる老後の収入額を書き出す
  • 2.  現在かかっている固定費・変動費の金額を書き出し、そこから老後に支払い不要になる金額を引く
  • 3.  2の金額に、老後に新しく必要になるであろう費用を足す
  • 4.  1(老後の収入)で3(老後に必要な支出)を賄えるかを考える

 1. 予想できる老後の収入の金額を書き出す
はじめに、公的年金や退職金など、老後に予想できる収入の金額を書き出しましょう。積み立てている貯金があれば、それも追加します。

 2. 現在の支出を書き出し、そこから老後に支払い不要になる金額を引く
老後に支払い不要になる支出は、たとえば「教育費や住宅ローン(老後までに完済予定の場合)」など。現在の支出額からこれらの金額を引くと、老後も継続して必要な生活費の目安が算出できます。

 3. 2の金額に、老後に新しくかかる費用を足す
老後に新しく必要になる支出は「自身の介護費用・持ち家のある方はリフォーム代」などがあてはまります。2で算出した「老後も継続して必要な生活費」にこれらの金額を追加すると、老後資金の全体像が把握できます。

 4. 1(老後の収入)で3(老後に必要な支出)を賄えるかを考える
最後に1で書き出した収入で、老後に必要な費用が賄えるかを考えます。こうして計算をしていくと、老後にいくら必要で、その金額は老後の収入で賄えるのか否か、またいくら足りないのかが把握できます。

経済状況やライフプランによって、「老後資金の目安」は一人ひとり異なります。上記の4つのステップを使って、「自分の老後に必要な資金」を計算しましょう。

40代からの資産運用――ポイントは“リスクチェック”

老後に資金を増やすための方法には「収入を増やす」「支出を減らす」「お金に働いてもらう」の3つがあります。最初の2つは比較的若い頃から馴染みがあるものでしょう。それが40代になると、資産運用などの「お金に働いてもらう」に興味を持つ方が増えます。その理由は、老後の資金対策を視野に入れ、なんらかの資産運用を検討し始めるからです。

資産運用は「失敗すると資金が減ってしまうかもしれない」、そんな不安を感じてしまうかもしれません。不安に負けず資産運用を続けるためにも、「本当にその投資は必要なのか」「理想とする老後のライフプランに見合ったものなのか」をしっかり見極めましょう。

「資産運用が必要かどうか」は、慎重に判断を

資産運用には、大なり小なりリスクが伴います。そのため、状況によっては「資産運用をしない」ことが、最善の選択になるケースもあります。そこで今回は「資産運用をしなくてもよいケース」と「資産運用を検討したほうがよいケース」、それぞれ例を用いながらご説明します。

 

⚫ 資産運用をしなくてもよいケース

老後資金が潤沢にある方は、資産運用をはじめる必要はありません。

たとえば

  • 「ある程度の収入があり、夫婦二人暮らし」
  • 「40代前半の時点で住宅ローンを完済している」
  • 「3000万円の貯蓄があり、高額な退職金をもらえる」

このような資金が潤沢な方は、まず老後に必要な金額を計算しましょう。老後にまとまったお金が入る予定で、かつ貯金が十分であれば、それだけで必要金額に達している可能性があります。収入を無理に増やさなくてよいのなら、資産運用をはじめる必要はありません。

 

⚫ 資産運用を検討したほうがよいケース

では、「今の貯金ペースだと、老後に必要な金額に達しない!」というケースではどうでしょう。

たとえば

  • 「現在40歳、貯金はほぼ無し」
  • 「老後に3000万円必要」

この場合、40歳から60歳までの20年間で3000万円を貯める必要があります。そのためには毎月12.5万円ずつ貯めなければ間に合いません。

毎月12.5万円の貯金が可能なら、コツコツ預金口座に貯めていけば目標金額に達します。
ただ、「12.5万円に満たない」のであれば、貯金を増やすための方法として「資産運用」を検討してもよいでしょう。

しかし、「目標金額を下方修正する」「奥さんにもパートに出てもらう」などの方法も考えられます。本当に資産運用が必要かどうかは慎重に検討しましょう。

 はじめての方は、リスクが少ない資産運用を

「資産運用が必要だ」と判断した場合、次に考えなければならないのは「どのような商品を選ぶべきか」です。
「比較的リスクが少ないものを選びたい」「収入の一部を資産運用にあてたい」という方におすすめなのは「自動積立定期預金(※1)貯蓄型保険(※2)・投信積立(※3)」など、毎月少しずつ積み立てていくタイプの金融商品。

 

※1 自動積立定期預金 毎月決まった積立日に、決まった積立金額を、普通預金口座から自動積立する預金商品のこと。積立期間は自身で決められる。
※2 貯蓄型保険 保険料の一部が積み立てされる医療保険で、万が一のときに備えながら、将来に向けた貯蓄ができる。貯蓄型保険の代表的なものとしては、亡くなったときなどに保険金を受け取れる一方で、満期時や解約時に今まで支払った保険料の一部または全てが返ってくる側面もある、終身保険などが該当する。
※3 投信積立 積み立て型の投資信託で、自分で選んだ投資信託を毎月一定額購入しながら積み立てていくこと。

 

しかし、この他にもさまざまなタイプの商品があるため、はじめて資産運用に挑戦する方が自分に合ったものを見抜くのは難しいでしょう。

また、「一時的に値下がりがあったとき、どの程度の下がり幅まで我慢できるか?」「性格は、積極的か保守的か?」など、その人のリスク許容度によって、選ぶべき金融商品は異なります。

自分に合った金融商品を選ぶためには、手前味噌ですが、まずは信頼できるFPを見つけて相談してください。経済状況や理想のライフプラン、性格などを話したうえでアドバイスをもらいましょう。

企業にお勤めの方は、福利厚生や退職金の活用も

資産運用の方法のひとつとして、企業の福利厚生や退職金制度などを活用する方法もあります。
たとえば、福利厚生として財形貯蓄制度(※4)、従業員持株会(※5)などを用意している会社もあります。

また、企業が出してくれる確定拠出年金の掛け金に加えて、給与天引きで自分のお金を積める「マッチング拠出(※6)」という制度も便利です。掛け金は、給与とみなされないため非課税な点もメリットです。
企業の制度にマッチするものがなければ、個人型確定拠出年金「iDeCo|イデコ(※7)」や「つみたてNISA(※8)」のような、税制メリットのある国の制度を活用しても良いでしょう。

 

※4 財形貯蓄制度 企業が給与からの天引き(賃金控除)で行う貯蓄制度。個人での加入はできないため、利用したい場合は勤務先が制度を導入しているかどうかの確認が必要である。
※5 従業員持株会 企業が従業員に対して自社株を保有させる制度。 会社が持株会を作り、従業員が会員になるというものである。会員は毎月一定額を支払って、持株会で株式を共同購入する。
※6 マッチング拠出 企業だけが負担していた確定拠出年金の掛金について、従業員自ら追加入金ができるようになったもの。2012年1月から実施が認められた。加入者が拠出する掛金は、所得控除の対象となる。
※7 iDeCo|イデコ 私的年金の制度。この制度への加入は任意で、加入者が毎月一定の掛金を拠出し、定期預金・保険・投資信託といった金融商品から自ら選んで運用するもの。受取額は、拠出した掛金の合計額や運用益によって異なる。
※8 つみたてNISA 2018年1月にスタートした、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度。メリットは、投資によって得られた売却益(譲渡益)や分配金の運用益が非課税になること。

幸せな老後は「目標・分散・長期目線」と「ひとつの方法にこだわりすぎない心」で築く

最後に、資産運用を成功させるためのコツや心構えについてご紹介します。

「目標・分散・長期目線」の3つを大切に

目標もないまま、なんとなく資産運用をスタートするのは危険です。最初に目標設定をしてから、目標金額に見合った金融商品や制度を選びましょう

また、いきなり大きなお金を一極集中して資産運用に回すのも控えた方が良いでしょう。特に保険商品などは、途中解約をするとペナルティを課されてしまうことも。無理のない金額から運用をはじめ、複数の金融商品や制度に分散投資することでリスクを抑えましょう。

そして、資産運用をはじめたら、少し値下がりしただけで「失敗した」「もうやめる」と気を落とすのではなく、長い目で見てください。10〜20年と時間をかければ、値下がりが回復することもあります。長期的目線を持って、資産運用をはじめましょう。

  • ※資産運用を成功させるコツをまとめると…
  • 1. 目標を設定したうえで、目標金額に見合った金融商品を選択する
  • 2. 途中解約はペナルティの対象になるため、無理のない金額から小さく運用を始める
  • 3. 一度値下がりが起こっても回復することがある。資産運用は長期的な目線で

バランスをとりながら資金対策を

老後の資金対策で何より大切なのは「収入を増やす」「支出を減らす」「お金にも働いてもらう」のうち、ひとつの方法だけにこだわりすぎないこと

「目標額に届かないから」と資産運用に大きなお金をかけてしまうのは、ハイリスクです。目標額を少なくした老後の暮らしを考えたり、40代のうちから生活費の中で節約できるものを探したり、「支出を減らす」視点を持つことも大切です。

また、60歳で引退予定だったところを少し延ばして65歳まで働く、今専業主婦である奥様に少しパートに出てもらうなど「収入を増やす」ための方法もあります。3つのバランスをとりながら、無理なく老後の資金対策をしていきましょう。

 

 

ライター:倉本 祐美加
企画編集:児島 宏明
コンテンツディレクター:小嶋 悠香

中野 敦成

中野 敦成

2005年4月から独立ファイナンシャルプランナー事務所LBプランニングを開設。ファイナンシャルプランナーとして、生活設計のアドバイス、コンサルティングを行っている。資産運用方面では、近代セールス、BIGLOBEマネー、大阪市信用金庫などでの執筆や労働組合、FP向け勉強会での講師を務める。