2019.03.27

ビジネス
「計画的な偶然」がキャリアを飛躍させる。40代でキャリアアップを実現させるポイントと目指すべき姿

気がつけば40代――
「思えば遠くまで来たもんだ」と感慨に浸りながらも、今後の人生について不安や焦り感じている方も少なくないのでは?

その不安要素のひとつが、ミドル以降のキャリア形成です。今の会社で出世を目指すのか、それとも新しい道に進むのかなど、キャリアの舵の切り方に悩んでいる方もいるでしょう。

そこで今回は、40代以降のキャリアを成功に導くための考え方について、明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科の野田 稔教授に教えていただきました。

【監修】 野田稔 教授

明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授/株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 特任研究顧問。野村総合研究所、リクルート社新規事業担当フェロー、多摩大学教授を経て現職に至る。数々のニュース番組のキャスターやコメンテーターとしてメディアでも活躍。主な著書に『組織論再入門』『中堅崩壊』(以上ダイヤモンド社)、『二流を超一流に変える「心」の燃やし方』(フォレスト出版)、『企業危機の法則』(角川書店)、『実はおもしろい経営戦略の話』(SBクリエイティブ)などがある。

キャリア完成図が見えかける40代。だからこそ生まれる戸惑いがある

20代でプレーヤーとして仕事のイロハを覚え、30代でマネージャー職を経験し、次はどこに向かえば良いのだろう?――40代はそんな思いを胸に、少し立ち止まる時期です。

今の会社で定年まで勤めることを想定しているなら、「自身のキャリアの完成図が見え始める時期」という言い方もできるでしょう。完成図が見え始めることを終盤と捉え、「自分のキャリアは本当に正しかったのか?」とこれまでの自分を振り返り、焦りを覚えたり、焦燥感にかられたりする方は珍しくありません。

そんな40代をネガティブに捉える方もいますが、野田教授は「40代はキャリアの終盤ではなく、キャリアを飛躍させるための挑戦をする時期」であると話します。

40代におけるキャリアアップとは

挑戦の先で狙うのは“キャリアアップ“になるかと思うのですが、「40代のキャリアアップとは何ぞや」と聞かれると、一言では答えられません。企業で昇進をしたり、好きを突き詰めた仕事をしたり、キャリアアップの意味合いは人によって異なるからです。

しかし、共通していることもあります。それは会社や誰かにいわれたことではなくて、『自分でやりたいことに、自らできる人になる』、これが40代のキャリアアップの指標となります。そんな人物像になるためにも、40代は挑戦をしなくてはいけない時期なのです。

そこで次項から、キャリアアップを狙うための大切な考え方をご紹介します。

キャリアの転換期に心得てほしい3つのポイント

40代の方が『自分でやりたいことに、自らできる人』になるためには、「一度、自身の働き方やマインドを見直すことが大切だ」と野田教授は語ります。何かに挑戦する前に意識してほしいのが、以下の3つのポイントです。

1.「お金」を意識しすぎない

「転職・起業・新しいプロジェクトの発案」など、新しい挑戦をはじめる際に注意してほしいのが「最初から“お金“を意識しすぎない」こと。もちろん、ビジネスとして成立させるためにはマネタイズは必須条件です。また、転職や起業による収入アップは誰もが求める条件でしょう。

しかし“お金”に意識が偏りすぎると「リスクを気にするあまり大胆な行動が取れない」「企画が無難なものになってしまう」などのデメリットが生じます。結果、「動いてはいるものの、周囲への影響力が弱く、ステップアップするための仕事につながらない」という状態に陥ると野田教授は論じます。「キャリアアップを狙う」準備期間では、一度“お金”のことは横において「やってみたいこと・おもしろいと思えること・好きなこと」を優先して考えてみましょう。

2.焦りは禁物。「ゆっくり急ぐ」を意識する

「定年や老い」など、キャリア終了までの制限時間が迫ってくる40代。だからこそ、今後のキャリアについて迷い、焦っている方が多いかもしれません。しかし、焦れば焦るほど冷静さや客観性が失われ、迷いがさらに深まる可能性があります。

このような状態では、「自分のキャリアを振り返り、得意・不得意を分析する」「キャリアを成功させるための戦略を練る」など、キャリアアップに必要な行動ができません。準備段階では、一度冷静になってゆっくりと自分と向き合い、今後のキャリアプランを考えてみましょう。そして、挑戦すべき方向性が定まってからは、スピーディーに動き出すことが大切です。そんな「ゆっくり急ぐ」というマインドを持って、40代以降のキャリアを考えてみてください。

3.「居心地が良い」は危険信号

40代以降のキャリアについて悩みながらも、長らく勤めてきた会社の居心地が良く、「そこから抜け出せない」という方もいるのではないでしょうか。しかし、現状維持の「居心地の良さ」は、あなたの社内での立場を危うくさせる可能性があります。
組織が評価するのは、事業を成長させるようなパフォーマンスを発揮する社員です。逆に「居心地の良さ」で現状維持をし続ける社員は、キャリアアップが望めないのはもちろん、「降格やリストラの対象になりかねない」と考えた方が良いでしょう。

良い環境に慣れ、成長を止めてしまうと、「その後に訪れるすべてのチャンスを放棄する」ことにもつながります。現在の職場で「居心地の良さ」を感じている方は、「本当にこのままで良いのか」「自分がやりたいことは何だったのか」と自問し、40代以降のキャリアプランについて真剣に考え始めましょう。

「計画された偶然」――これがキャリアアップのキーワード

3つのポイントを踏まえた上で、「キャリアアップを実現する」ために覚えておいてほしい考え方があります。それが、「都合の良い偶然を自ら引き寄せる」という考え方です。

これは、1999年にスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した「計画された偶発性理論(プランドハップンスタンスセオリー)」という考え方に基づくもので、現在もキャリア論を語るうえで大切な指標のひとつとされています。

  • 「個人のキャリアの8割は予想できない偶発性によって形成される。しかし、その偶然を引き寄せるための行動は意図してできる」

これが計画された偶発性理論の考え方です。“良質なキャリアは良質な偶然が形成し、またその偶然は計画的に引き寄せることができる”というものです。

では、“良質な偶然”を引き寄せるためには何が必要なのでしょうか?その方法はさまざまですが、周囲から期待されている状態を作ることがひとつの答えだと野田教授は語ります。

“期待“が良質な偶然を引き寄せる

実はキャリアをステップアップさせるための偶然は、多くの場合、他人から与えられるものです。他人からキャリアアップにつながる偶然=チャンスをもらうためには一緒に仕事をしている人・会社から、「あいつに頼んでみよう」と思わせるような“期待されている状態”を作ることが必要です。

周囲からの”期待”に合わせて自分を成長させる

そこで野田教授は年代ごとに周囲から“期待されること”を分類し、それに合わせて自身を成長させていく「キャリア成長論」という説を唱えています。

年代ごとに「どのような役割や仕事を期待されているのか?」を明確にして、そこに近づく努力をすれば素敵な偶然を引き寄せやすくなり、キャリアアップが狙えるという考え方です。キャリア成長論では、以下の例のように「周囲に期待されていること」を定義しています。

  • 20代:「会社(組織やチーム)になじみ、優秀だといわれること」
  • 30代:「専門性を身につけ、ある分野のプロになること」

このような「周囲の期待」に合わせて成長することで、大きなプロジェクトを担当する機会が訪れたり、業界関係者からヘッドハンティングされたり、素敵な偶然を引き寄せることができるのです。

40代に周囲が期待するのは「ボーダーラインを超える仕事」

では「40代が周囲から期待されていること」は、どのようなものなのでしょうか。キャリア成長論では、それを「ボーダーラインを超えること」と定義しています。
「ボーダーラインを超える」とは、自らの発意でこれまでにない新たなプロジェクトを起こすといった、部署や会社の枠を越えた働き方・役割を担うことです。

例えばですが、その期待に応えて何かプロジェクトを成功させたら、強い発言権を得るチャンスが巡ってきます。その発言権を上手に使えば、さまざまなキャリアアップが見込めます。重要な役職につくこともできるし、より大きなプロジェクトを自分で作ることもできるし、好きなところに転職することもできるでしょう。選択肢が増えて、自分の意思で自由にキャリアを描き・進めるようになるのです。

マクロの視点で自分の専門性を見抜く

ボーダーラインを超えた仕事をする際に生きてくるのが、30代までに培った専門性です。ボーダーを超える仕事をするために、30代で必要最低限の専門的なスキルを身につけておく必要があります。ところが、野田教授がこの事実を伝えると「自分には何の専門性もないのでは……」と考えこんでしまう方も多くいるそうです。

しかし、40代まで働いて「何の専門性もない」という人は“稀”だと野田教授は話します。自分のスキルを十分に棚卸しできていないだけで、細かく自分の仕事や働き方を振り返ると、何かしらの専門性が見えてきます。

マクロの視点で自分の専門性を棚卸しする

例えば「自分は営業だから、いわゆる専門性はない」と考えている方がいるかもしれません。しかし、営業という仕事は「コミュニケーション能力」や「意思決定を促す交渉力」という専門性を持つ職業です。

また、営業の中にも「話を聞いて相談役として相手に信頼されるタイプ」「懐に入っていくのがうまく、可愛がられながら信頼されるタイプ」「豊富な知識で相手の尊敬を勝ち取るタイプ」など、さまざまな専門性があります。

どんなことも突き詰めて考えれば、その人の専門性と呼べるでしょう。断捨離や整理整頓の本でミリオンセラーを飛ばした人がいることからもわかるように、プロフェッショナリティはさまざまなところに宿ります。

マクロの視点で自分のスキルやキャリアを振り返ることで、自分が磨き上げてきた本当の専門性が見えてきます。キャリアを振り返る際は、漠然と考えるのではなく、なるべく細かく自分がやってきたことを棚卸ししましょう。

そうして専門性を棚卸ししていけば、自分がどういう方向性でボーダーを超えた仕事をすると良いのかが見えてくるでしょう。

40代は「第二のスタート」。偶然を味方につけてキャリアを成功に導く

40代は折り返し地点ではなく、多くの人を巻き込んでボーダーラインを超えた仕事を成し遂げ、キャリアアップするための第二のスタートの時期です。
これまでの働き方やマインドを見直し、キャリアを振り返りながら自分の専門性に気づきましょう。そして、40代以降に進むべき方向を定め、経験を少しずつ積み重ねれば、キャリアを成功に導く“良い偶然”が向こうからやってくるでしょう。

 

企画:児島宏明
編集:小嶋悠香

野田 稔

野田 稔

明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授/株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 特任研究顧問。URL: http://www.meiji.ac.jp/mbs/faculty/NODA_Minoru.html