2019.05.07

ビジネス
【前編】「ハラスメント」で炎上しないために!40代が知っておきたい「新卒との接し方」

セクハラ・パワハラ・モラハラなどの問題が表面化し、企業のコンプライアンスは日に日に厳しくなっています。

自分はそんなことしないから大丈夫――
そう思っていても、ふとした大人の言動・行動・態度は、新卒社員にとって「ハラスメント」と受け取られることも。

そこで今回は、ハラスメントを避けるための新卒との接し方・ポイントについて、コミュニケーションやストレスマネジメントに詳しい大野萌子さんに聞きました。

(以下は大野さんご執筆内容です)

大野萌子

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

まずは相手を知ることから!新卒のキーワードはやはり「ゆとり世代」

新卒を含めた20代は、ほぼゆとり教育を受けて育ってきた世代です。「ゆとり世代だから」と、ひとくくりにすることはできませんが、この世代特有の傾向があるのは事実です。近年の新卒社員の傾向として以下の3つがあると言われています。

特徴①思っていても口に出さないが60%以上!?

私が新入社員研修で必ず聞く質問の中のひとつに
「飲食店で、食後のコーヒーと紅茶を間違えられたらどうする?」
というものがあります。

この質問は「そんなに大きな問題ではないけれど、自分の意向と違うことが起こったときにどう対応するか」を確認するために投げかけています。

この質問に対して、昨年あたり(2018年)から急増しているのが「黙って飲む」という答え。間違いを正さずに受け入れる人が増えており、これはつまり「思っていても口に出さないタイプが増えている」ということだと考えられます。

特徴②身体接触はご法度

これは数年前に大学学内で起こった、ある出来事です。ある教員が泣いている学生の肩をポンポンと叩きながら話を聞いていました。すると、その様子を見たほかの学生が「あの先生は気持ち悪い」と学校に訴えたそうです。

このような「触れることへの敏感さ」は、新卒世代の特徴のひとつです。これは、女性だけに限った話ではありません。「『頑張ってる?』などと上司に肩を揉まれるのが不快」など、若年層の男性からの身体接触に関する相談も増えています。男女を問わず、新卒世代は身体接触にかなり敏感になっている傾向があります。

特徴③打たれ弱く、比べることへの抵抗が強い

20代の大部分を占める「ゆとり世代」は、「運動会等で順位を決めない・成績表が張り出されない」など、学生時代に競争を強いられた経験が少ない世代です。

そのため「『私は私で頑張っているんだから人と比べないでほしい』と開き直る」「ちょっとした挫折で自信を喪失して、モチベーションを保てなくなる」など、競争を避けたがる、または結果に対して過剰に反応する傾向があります。「打たれ弱く、比べられたくない」という感情を持っているのが、近年の新卒世代の特徴です。

「そんな気はなかったのに……」ミドル男性が犯してしまった3つのハラスメント

これだけハラスメントが騒がれている昨今、少なからず対応に気を遣っているミドル層の方も多いかと思います。どんなに気を遣っていても、「良かれと思ってやったこと」が裏目に出るケースも少なくありません。ここでは、「そんなつもりはなかったのに部下にハラスメントと捉えられてしまった」3つのケースをご紹介します。

 ケース1:勉強にと思って同行させていたのに(セクハラ)

ある40代男性上司がセクハラで訴えられたケースです。彼は「仕事は見て覚える」という方針を重視し、まずは現場の雰囲気や客先とのやり取りを体験させようと、新卒の女性社員に営業同行をさせていました。

行動を共にしているので、移動も昼食も基本的に一緒。客先を回った後などは、労うつもりで夕食を一緒に食べることもあったそうです。しかしここに出張が加わった瞬間、女性社員から「もう耐えられない」と会社に訴えられてしまいました。

ケース2:気を遣ってやんわりと伝えたつもりが(パワハラ)

こちらはパワハラで訴えられた、ある上司のケースです。上司が部下に書類作成を頼もうとしたところ、部下が忙しそうだったので、上司は「手の空いたときでいいよ」と伝えつつ依頼をしました。しかしいつまでも提出がなく期日も迫ったため、しびれを切らして尋ねたところ、その部下は「手が空いてないのでまだです」と悪びれもせずに言い放ったのだそう。

それを聞いた上司は、「ずいぶん余裕を持って渡していたのにどういうことなんだ!早く提出するように!」と強い口調で部下を注意しました。すると後日、「上司にパワハラを受けた」と、部下からコンプライアンス部門に報告があがったそうです。

ケース3:自主性を重んじるために指示しなかったケース(モラハラ)

最後は「自分で考えて仕事に取り組んでほしい」、そう思っていた上司のケースです。
「あれこれ指導するよりも自主的な取り組みで成長させたい」という指導方針を持っていたため、部下には細かいことは言わずに「今にわかるから」「とりあえずは見てて」というような声掛けをしていたそう。しかし部下から「何も教えてもらえず、やることがなく精神的に居場所がない」と訴えられてしまいました。

これらの3つのケースからわかるのは「上司の意図と部下の受け取り方がすれ違っている」ということです。実はハラスメントの多くは、このようなコミュニケーションの行き違いが原因で発生します。それではすれ違いを避けるためには、どのようなコミュニケーションが必要なのでしょうか?次項で詳しくご紹介します。

ハラスメント予防は「相手の理解度を確認」「曖昧な表現」「スモールステップ」の3つを意識

ハラスメントの原因となる「コミュニケーションの行き違い」を避けるためには、日々の関わりの中で信頼関係を育んでいくことが大切です。
言ってはいけないNGワード等の習得よりも(基本的に、誰が聞いてもひどいと認識するような暴言や蔑みの言葉以外、神経質になる必要はありません)以下の3つのポイントをチェックして、どうすれば信頼関係を作れるか考えてみましょう。

ポイント①相手の理解度を確認する

指示や指導は相手の意向を確かめ、了解を得たときに初めて成り立ちます。「はい、わかりました」と形式的に部下が答えたからと言って、遂行できるとは限りません。

個人の能力や感じ方の差を確認しながら物事を進めていくのは、上下関係であっても必要なこと指示や指導で重要なのは「こちらの意向が相手にきちんと伝わっているか確認する」ということです。「一方的に伝えて終わり」ではなく、相手の気持ちや理解度を確かめながら進めましょう。

ポイント②曖昧な表現を避ける

例えば「後でやります」という言葉。人は「後で」という単語から、一体どれくらいの時間を想定するでしょうか。5分と認識する人もいれば、1日・2日後など、人によって「後で」の解釈はさまざまです。

「後で」という表現を「頼んだ側は5分後・頼まれた側が次の日」と認識していた場合、頼んだ側が「いつまで待たせるんだ!」という不満を持つことは想像できますよね。このような曖昧な表現による小さなすれ違いはお互いのマイナスイメージとなります。そしてこれが積み重なると、徐々に関係性にひびが入っていきます。

「言わなくてもわかるだろう」という認識を捨てて、具体的な数字や期間で明確に伝えるようにしましょう。

ポイント③スモールステップで指導をする

最近は「会社の固定電話の使い方がわからない新人が増えている」と言われています。例えば、固定電話から電話を掛けられない新人に対して「こんなこともできないのか」という対応を取ると、ケース2で紹介したような「パワハラ」と受け取られる可能性があります。

20代の特徴に「打たれ弱さ」があることを踏まえると、高圧的な指導は厳禁。
目標ややることを細分化し、小さな成功体験を積み重ねながら仕事を覚えていく「スモールステップ」と呼ばれるような指導が、現代のハラスメント予防に効果的です。

「信頼関係を作ること」がハラスメント予防の最重要事項

ハラスメントの多くは、お互いの意向がきちんと伝わらずに、思い込みやすれ違いが重なって発生します。そのため、相手との意思疎通をしっかりと取ることがハラスメントの最も有効な予防策です。ですが、注意してほしいのがハラスメントを過剰に気にしてしまうこと。

「あれを言ってはいけない」「これをしてはいけない」と意識しすぎると、関わること自体にストレスを覚え、会話を最小限に抑えてしまったり、遠慮しすぎて言葉足らずになったり、余計にコミュニケーション不全が増長します。

特定の言葉や言動だけに注意するのではなく、細かく具体的な言葉でコミュニケーションを取ることが何より大切。そうすることで、相手との間に信頼関係が生まれ、ちょっとしたことでハラスメントと認識することがなくなっていきます。

面倒くさがらずに、可能な限り具体的な言葉でやり取りするように心がけましょう。

 

 

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大野萌子

大野萌子

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。著書に『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。 URL:https://japan-mental-up.jimdo.com/