腕時計ジャーナリスト・渋谷ヤスヒトが語る。5つのポイントで見抜く40代ビジネスマンの“好印象”腕時計

携帯電話やスマートフォンなど、「時間を確認するアイテム」が豊富な現代。
それらの中でも腕時計は、「時を知る道具」というより「持つ人のパーソナリティやセンスを表現するアイテム」として親しまれています。

そんな自己表現に関わるアイテムだからこそ、「これだ!」という逸品にたどり着くには時間がかかるもの。また「ビジネスシーンで身につけること」「40代という年齢」などを考慮すると、「どう見られるか?」を意識して腕時計を選ぶ必要もあります。

高級ブランドの時計でなくても良いけど、仕事でも使える、質が良くて自分に合った腕時計がほしい」今回は、そんな40代ビジネスマンに向けて、腕時計の選び方をご紹介。

腕時計の専門家で、モノジャーナリスト・編集者として活躍する「渋谷ヤスヒト」さんに、腕時計選びのポイントとおすすめの腕時計について詳しく解説していただきます。

渋谷ヤスヒト

腕時計ジャーナリスト・モノジャーナリスト、編集者。No.1モノ情報誌「GoodsPress」の雑誌編集者として1995年からスイス2大時計フェアの取材を開始。以来現在まで25年以上も継続して2大時計大国スイスと日本の時計産業の取材を続けてきた。訪れたファクトリーは「パテック・フィリップ」「オーデマ ピゲ」「ヴァシュロン・コンスタンタン」「A.ランゲ&ゾーネ」「ロンジン」「オメガ」など百数十年を超える老舗ブランドから、時計ブームを牽引した「フランク・ミュラー」「パルミジャーニ・フルリエ」など個人時計師が始めた新進気鋭のブランドまで数百ブランドを超える。時計ジャーナリストには珍しくスマートウォッチにも造詣が深い稀有な存在。世界の時計産業全体の動向まで解説するアナリストとしても知られ、さまざまな雑誌やウエブに寄稿する他、現在は時計専門誌「クロノス」ウエブ版に時計業界通信を連載中。モノ情報誌「GoodsPress」「世界の本格腕時計」元・副編集長、ライフスタイル誌「エスクァイア日本版」元コントリビューティングエディター、テレビの情報番組のコメンテーターや総合監修者なども歴任し、時計やモノの歴史、使い方に関する講演活動も行う。現在、株式会社オフィス・ノマド代表取締役。URL:https://bit.ly/2GzKRBK

※以下はすべて、渋谷さんの執筆した内容です

 

 

ビジネスにもマッチした「シンプル&スタンダード」を見抜く5つのポイント

40代のビジネスマンにおすすめしたいのが、どんな服装に合わせても違和感がなく、大人な雰囲気にもぴたりとはまる「シンプル&スタンダード」な腕時計。
ただ、「シンプルでスタンダードな腕時計」と言ってもさまざまな種類があります。どのようなポイントに注目して選べば良いのか、5つのポイントに分けてご紹介しましょう。

ポイント1:ケースは丸型かトノー型。カラーはシルバーが基本

時計の「ケース」とは、時計内部の機能を守る「側(がわ)」全体を表します。時計のケースにはいくつかの種類がありますが、おすすめはもっとも一般的な「丸型」かサイドカーブが丸みを帯びた「トノー型」

「丸型」「トノー型」は、文字盤がもっとも読みやすく、またスーツやドレスシャツの袖口に引っ掛からない優しい形でもあります。シンプル&スタンダードな腕時計を選ぶ上で、まず抑えておいてほしいポイントです。

  • ・丸形
  • 円形のケースが特徴。あらゆるケースの中でももっともベーシックな型です。
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  • トノー型
  • シンプルながら、知的で格式高い印象があるトノー型。

ケースのカラーはシルバーのステンレススチールやチタンが基本。表面をゴールドにしたものもありますが、悪目立ちする可能性があるため、ビジネスシーンでは避けた方が良いでしょう。

また、サイズは直径40mm前後がおすすめ。大柄な方は別ですが42mmを超えると日本人の一般的な男性の腕には、ちょっと大きい印象です。しかも、最近は36mm~39mm前後の小ぶりなサイズが世界的なトレンド。このあたりを目安に選んでみてください。

ポイント2:大人の風格を活かす「クラシック&レトロ」でさりげないオシャレ

続いて、もっともこだわっていただきたいのが、「腕時計の顔」である文字盤のスタイル(デザイン)です。さまざまなスタイルの文字盤がありますが、私がおすすめするのは「クラシック」と「レトロモダン」の2つ。

・クラシック
“スイス時計の黄金時代”と呼ばれる1950年代に確立され、今の高級時計デザインの基本になっているスタイル。ギョーシェ文字盤(※1)放射仕上げ(※2)の文字盤に、細い棒型の印が記されたバーインデックス(※3)ローマ数字インデックス(※4)アラビア数字インデックス(※5)などが代表的。さらに、天才時計技師アブラアン・ルイ・ブレゲが作った、針の先端に円をあしらった「ブレゲ針」や、先端に向かってシャープになる「ドルフィン針」、棒状で先の部分だけが尖った「バトン針」、植物の葉の形状をシャープにした「リーフ針」を組み合わせたもの。

  • (※1)ギョーシェ文字盤
  • 文字版に規則正しい、深い彫刻加工を施した文字盤。懐中時計の時代から使われてきた伝統的なデザインで、クラシックで重厚な印象に。
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  • (※2)放射仕上げ
  • 文字版の表面に金属製のブラシなどで細かな彫刻加工や研磨加工を施し、光が文字盤の中心から外側に向かって拡がるように見せる加工技術。
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  • (※3)バーインデックス
  • 腕時計の「時」と「分」を読み取る際に目盛りの役割を果たす、文字盤上にある棒型の金属製パーツや印刷による印。シンプルな形なので、時計の顔もシンプルな印象に。
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  • (※4)ローマ数字インデックス
  • 腕時計の「時」と「分」を読み取る際に目盛りの役割を果たす、文字版上にあるローマ数字の金属製パーツや印刷による印。時計の顔がクラシックなローマ数字のおかげで重厚な印象に。
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  • (※5)アラビア数字インデックス
  • 腕時計の「時」と「分」を読み取る際に目盛りの役割を果たす、文字盤上にあるアラビア数字の金属製のパーツや印刷による印。バーインデックスやアラビア数字インデックスより読み取りやすくスポーティな印象に。
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  • ▲ギョーシェ文字盤にローマ数字インデックス、ブレゲ針を組み合わせた文字版。すべての要素がクラシックなので、際立って重厚な印象に。

・レトロモダン
レトロモダンは、1960年代〜1970年代に生まれた、シンプルで機能的なスタイル。
ラッカー塗装を何層も重ねて色味にグラデーションや深みを出した文字盤に、太くクッキリとしたバーインデックスやアラビア数字インデックスが付けられたタイプ。針は、視認性に優れた、蓄光塗料付きの太い棒状のタイプが付けられています。

  • ▲深みと光沢のあるラッカー塗装に太めのバーインデックス、蓄光塗料付きの針を配置したレトロモダンな文字盤

シンプルでありながら、大人だからこそ似合うクラシカルでレトロな印象なのがこの2つの特徴。主張を抑えつつ、さりげなくセンスの良さを演出できます。

文字盤のカラーは、上品なホワイトやアイボリー、落ち着きのあるシルバー・グレー・ブラウン、爽やかなブルーなど、主張が強すぎないものがおすすめ。
ブラックの文字盤もシックですが、インパクトが強く、オフタイム向き。ビジネスシーンでの利用を考えると、避けた方が無難です。

ポイント3:時計の見栄えや機能に「パワーリザーブ」でプラスαを

時計の見栄えや機能に関わる要素として、「針の形状」も抑えておきたいポイント。ビジネスシーンでの利用も想定すると、「中3針(なかさんしん)」と「スモールセコンド」の2つタイプが候補にあがります。

  • ・中3針(なかさんしん)
  • 「時・分・秒」を文字盤中央の3本の針で表示するタイプ。機能がシンプルで使いやすいのが特徴。
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  • ・スモールセコンド

ただ、「中3針(なかさんしん)」「スモールセコンド」の2つは、いわゆる無難なデザインで「少し物足りない」と感じる方もいるかもしれません。そんな方には、パワーリザーブ表示(※6)などの機能が付いたものをおすすめします。

  • ▲(※6)パワーリザーブ付きの腕時計
    パワーリザーブとは「動作持続時間」のこと。文字盤の左側のメーター(0~40までの表示)がパワーリザーブ。メーターの数値が40までのため、この時計の「動作持続時間」は40時間となる。

パワーリザーブが付くことでメカニカルな印象が強くなり、メカ感が好みの方には特におすすめ。また、ストップウォッチ機能付きの腕時計(クロノグラフ)も良いでしょう。さまざまな機能が搭載されても、文字盤のデザインやカラーが落ち着いたものであれば、子どもっぽい印象になることはありません。

ポイント4:「機械式」と「クォーツ式」。ムーブメントは好みに合わせてチョイス

ムーブメントとは、時計を動かす仕組みのことです。ぜんまいを巻いて動かす「機械式」と電池で動かす「クォーツ式」の2つが代表的です。デザインや見た目にはそこまで影響しないため、好みに合わせて選ぶと良いでしょう。

機械式は、週に一度は時刻を合わせるのが望ましいため、少し手間がかかります。ただ、慣れればこの手間が実は楽しいもので、時計への愛着が増します。もしあなたがクルマや自転車などのメカ好きなら、ぜひ趣味性の高い機械式を選んでみてください。

反対に、クォーツ式は手間がかからず使い勝手が抜群なのが魅力です。標準電波を自動的に受信して時刻を修正してくれるものや、ソーラー駆動で自動的に充電してくれるものなど、手間がかからない製品がたくさんあります。趣味性よりも、利便性を優先したい方はクォーツ式が良いかもしれません。

ポイント5:本格時計ブランドの伝統とストーリーが愛着を生む

そしてもうひとつ、ぜひ押さえておきたい大切なポイントがあります。それは、「時計作りを専業にしてきた歴史あるブランド、またはファッションブランドであっても自社で時計作りに本気で取り組むブランドの製品を選ぶ」ということです。

こうしたブランドには、歴史を超えてきたオリジナルのデザインやメカニズムの伝統、魅力的なストーリーがあり、それを踏まえて購入することで愛着が湧きます。また、アフターサービス体制もしっかりとしているので、長く使い続けることもできます。

  • ※40代ビジネスマンの時計選び5つのポイント
  • 【1】ケースは丸型かトノー型。カラーはシルバー、サイズは40mm前後。
  • 【2】文字盤は「クラシック」か「レトロモダン」、カラーは「ホワイト・アイボリー・シルバー・グレー」など。
  • 【3】針の形状は「中3針」か「スモールセコンド」。パワーリザーブ表示付きもおすすめ。
  • 【4】ムーブメントは趣味性を考えると「機械式」、利便性なら「クォーツ式」。
  • 【5】歴史が深く、時計作りに本気で取り組むブランドの製品を選んだ方が愛着が増す。

渋谷ヤスヒトが選ぶ、今おすすめの腕時計4本

では、40代ビジネスマンにぴったりの腕時計を具体的にご推薦します。購入のしやすさを考え、実売価格10万前後のものをチョイスしてみました。

なお、購入に当たっては、必ず実物を腕に乗せてみることをおすすめします。写真と実物では印象が変わることがあるので、購入の際は十分注意してください。

ティソ ヘリテージ ヴィソデート オートマティック

¥78,840(税込)
自動巻き。ケース径40mm。SSケース&ブレスレット。シースルーバック。3気圧防水。
商品URL:https://www.tissotwatches.com/ja-jp/shop/t0194301103100.html

ティソは1853年に創業した老舗時計ブランドで、スイスでもっとも知られている、世界でもトップ10の販売数を誇るメジャーな存在。高品質な腕時計を手の届く価格で提供してくれることで定評があります。このモデルはアンティークウォッチに多く採用されているエレガントなドルフィン針(※クラシック時計の項目を参照)と、ノスタルジックなドーム型のガラス(風防)を組み合わせ、メッシュブレスレットを採用するなど、1950年代のスタイルを現代に甦らせたクラシックな逸品。シースルーバック(ケースの裏側が透明で時計内部が透けて見えるデザイン)で自動巻きムーブメントの姿も楽しめます。

ハミルトン ジャズマスター オープンハート

¥128,520(税込)
自動巻き。ケース径42mm。SSケース&ブレスレット。5気圧防水。
商品URL:https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/h32705141-jazzmaster-open-heart-auto.html

ハミルトンはアメリカがルーツにあり、現在はスイスのブランド。18世紀の懐中時計の時代には鉄道時計として名声を轟かせた名門で、あのエルヴィス・プレスリーが愛用した「ベンチュラ」など数々の伝説の時計を生んだブランドとしても知られています。このモデルは文字盤に窓があり、機械式ムーブメントが時を刻む姿が、シースルーのケース裏ばかりでなく文字盤の表からも楽しめる「オープンハート」仕様のクラシックモデル。搭載されるムーブメントが最新の約80時間パワーリザーブなのも魅力です。少々大きめですが、ケース厚も薄いので大丈夫。文字盤がシルバーのタイプもあります。

セイコー プレザージュ 

¥162,000(税込)
自動巻き。ケース径40.8mm。チタンケース&ブレスレット。10気圧防水。
商品URL:https://www.seikowatches.com/jp-ja/products/presage/sarw041

セイコーは130年以上の歴史を持ち、1969年にクォーツ式腕時計を世界で初めて発売。クォーツの基本特許を公開して世界を席巻するなど、世界最高峰の技術力を誇ります。また高品質・高精度の機械式ムーブメントの開発・製造まですべてを自社内で手がけているので、機械式の時計メーカーとしても世界で高く評価され、人気が高まっています。これはその機械式モデル「プレザージュ」のクラシックスタイル、パワーリザーブ&日付表示付きの腕時計。チタンケースで軽量。しかもシースルー仕様のケース裏からは自慢の完全自社製ムーブメントの姿も楽しめます。同様のデザインでシンプルな中3針のモデルなどもおすすめです。

シチズン エクシード

¥118,800(税込)
エコ・ドライブ(ソーラー駆動クォーツ)電波時計。ケース径38mm。スーパーチタニウム™ケース&ブレスレット。5気圧防水。
商品URL:https://citizen.jp/product/exceed/lineup/detail/index.html?seihin_no=AT6030-51E

電波時計を日本でもいち早く開発、展開してきたシチズン。これはエレガントな薄型ドレスウォッチコレクション「エクシード」のシンプルな電波時計モデル。自動的に標準電波を定時受信して秒まで正確な時刻を表示。しかもソーラー駆動なので定期的な電池交換は一切不要。さらに8.4mmというスタンダードウォッチとしてはトップクラスの薄さに加えて、ケースとブレスレットの素材に、シチズンが誇る表面加工・デュラテクトプラチナを施した軽量なチタンを採用。快適な装着感に加えて、傷が付きにくい強さと美しさを実現。「時を知る道具」として最高の性能を誇ります。

5つのポイントを踏まえて、大人の余裕をかもしだす腕時計を

大人の風格や雰囲気がにじみ出る40代は、シンプル&スタンダードな腕時計がよく似合う年代です。今回ご紹介した5つのポイントを踏まえて、落ち着いた印象を与えつつさりげなくセンスの良さを演出できる腕時計を選んでみてください。

最後に、もうひとつだけ選び方のポイントを。
高温多湿で汗をかきやすい日本は、汗でレザーストラップが傷み、毎日使っていると驚くほど早く劣化します。毎日同じ腕時計を付けたいという方は、レザーストラップよりもブレスレット、あるいはラバーストラップのモデルをチョイスしましょう。

 

企画・編集 児島宏明

渋谷ヤスヒト

渋谷ヤスヒト

腕時計ジャーナリスト・モノジャーナリスト、編集者。No.1モノ情報誌「GoodsPress」の雑誌編集者として1995年からスイス2大時計フェアの取材を開始。以来現在まで25年以上も継続して2大時計大国スイスと日本の時計産業の取材を続けてきた。訪れたファクトリーは「パテック・フィリップ」「オーデマ ピゲ」「ヴァシュロン・コンスタンタン」「A.ランゲ&ゾーネ」「ロンジン」「オメガ」など百数十年を超える老舗ブランドから、時計ブームを牽引した「フランク・ミュラー」「パルミジャーニ・フルリエ」など個人時計師が始めた新進気鋭のブランドまで数百ブランドを超える。時計ジャーナリストには珍しくスマートウォッチにも造詣が深い稀有な存在。世界の時計産業全体の動向まで解説するアナリストとしても知られ、さまざまな雑誌やウエブに寄稿する他、現在は時計専門誌「クロノス」ウエブ版に時計業界通信を連載中。URL:https://bit.ly/2GzKRBK