9月・10月は「台風シーズン」。事前準備で被害を最小限に【災害リスクアドバイザー松島康生氏監修】

夏から秋にかけて本格的に増えてくる台風。
毎年、日本各地で大雨や風による大きな被害が発生しています。特に2018年7月、台風7号の影響で西日本を中心に記録されたすさまじい豪雨は記憶に新しいことでしょう。

日本に住んでいる限り、どこにいても台風に遭うことは避けられず、安全だと思っている自宅や職場周辺に意外な危険が潜んでいるかもしれません。

台風から家や家族を守るために、事前にどのような対策をしておけばいいのか?
もし大雨による洪水や暴風に巻き込まれた際には、どのように対処すれば良いのか?

台風対策のポイントについて、「災害リスク評価研究所」の代表を務める災害リスクアドバイザー 松島康生さんに詳しく語っていただきました。

松島康生

災害リスク評価研究所 代表。災害リスクアドバイザー(防災危機管理)、防災計画/BCP(事業継続計画)コンサルタント。1993年 朝日航洋株式会社(トヨタグループ)から、国や自治体向け防災コンサルタントのプロデューサーとして、防災関連業務に従事。2011年東日本大震災の支援・防災調査・防災講演などを通して、自宅や実家の災害リスクを心配される方が多いことを知り、これまでの技術やノウハウを一般向けに発信するために2012年 災害リスク評価研究所を設立。一般住宅や企業向けに災害危険度を調査し、防災対策をアドバイスする「災害リスク評価」といったサービスを開始。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌など、これまで200以上のメディアに出演し防災についてのアドバイスを発信している。URL:http://www.saigai-risk.com/

※以下はすべて、松島さんのインタビュー内容です

 

恐ろしい台風による被害・・・何に気をつけるべきか

台風による被害は、大きく分けて以下の3つに分類されます。

  • 1.降雨による外水氾濫(洪水)・内水氾濫
  • 2.土砂災害(急傾斜地・土石流)
  • 3.突風および高潮

では、それぞれの被害について解説しましょう。

1.降雨による外水氾濫(洪水)・内水氾濫

水の被害は、「洪水」と呼ばれる外水氾濫と内水氾濫の2つに分かれます。洪水とは、堤防が決壊して街の中に水が入り込むこと。家屋に浸水し人の命が奪われるなど、甚大な被害につながる水害です。

一方で、ここ10年ほど増え続けているのが、内水氾濫。内水氾濫は、コンクリートやアスファルトで覆われた都市部で発生します。田畑がある地域だと水は吸収されますが、都市部では降った雨の行き場が下水道しかありません。下水道の許容範囲は1時間あたり50ミリと言われていますが、その許容範囲を超えると、下水道から水があふれ道路が浸水してしまうのです。

内水氾濫が起きたときに特に怖いのが、アンダーパスと呼ばれる鉄道や道路と交差する地下道です。周囲の地面よりも掘り下げられた低い場所にあるため、水が集まりやすく、毎年のように車の水没被害が発生しています。

2.土砂災害(土石流・急傾斜地)

土砂災害と聞くと、山の土砂がすごい勢いでふもとに向かって流れていく「土石流」を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、都心の急傾斜地で起こる「崖くずれ」も恐ろしい土砂災害のひとつです。東京都港区や横浜市のような都心部でも、崖くずれを起こしやすい場所は多くあります。

集中的に雨が降ると、崖くずれが起きて家屋に被害を及ぼす可能性があるため、「都心に住んでいるから関係ない」と思い込まずに、自宅や職場が土砂災害警戒区域であるかどうかをチェックしましょう。

3.突風および高潮

風の強い台風が来たときは、突風に注意です。屋根瓦やトタン板、飲食店の前にある立て看板が飛ばされることも。「飛来物が人に直撃して負傷」という被害が毎年発生しています。

また、沿岸部にお住まいの方は高潮に注意。高潮は、強風によって発生する「吹き寄せ」と低気圧によって海面が上昇する「吸い上げ」という2つの原因で発生します。特にこれらが重なり合ったり、満潮時刻が重なったりした時は高潮が発生しやすく、沿岸部一帯が浸水するといった被害も起こっています。

今から備える台風対策――ポイントはハザードマップと実地調査

水・土砂・風などによる被害から自宅や家族を守るためには、事前の準備が重要。
以下のポイントを踏まえて、本格的な台風シーズンに入る前に台風対策をしましょう。

必ず確認しておきたい、ハザードマップ

台風が発生する前に必ずチェックしてほしいのが、ハザードマップ。ハザードマップとは、自然災害による被害を予測して、危険なエリアやレベルを表記した地図のこと。ほとんどの自治体がハザードマップを作成しているので、「●●(自治体名) ハザードマップ」で検索するとすぐに確認できるはずです。

自宅もしくは勤め先や通勤経路が浸水被害もしくは洪水の被害を受けやすいか、または土砂災害が起こる可能性があるかを確認してください。もし危険エリアに該当していれば、「避難すべき場所である」と捉えてください。

街歩きで地形の形状を把握。避難がスムーズに

ハザードマップを眺めるだけではピンと来ないこともあるでしょう。そこでおすすめなのが、街歩きです。時間があるときに、自宅や勤務先の周りを歩いたり自転車で走ったりしてみてください。完璧に地形を把握する必要はなく、ハザードマップを見ながら特徴を把握するだけでもかまいません。

「ここは土地が低くなっているな」「水が溜まりやすそうだな」といった高低差がわかるだけでも、いざ避難するときにどちらの方向にどのルートで避難すれば安全かを知ることができます。

子どもを守るために。防災教育で災害発生時のリスクを軽減

小さな子どもがいる場合は、台風シーズンの前に最低限の防災教育をしましょう。例えば、台風時の行動について、以下のようなポイントを伝えておくだけでもリスク回避につながります。

  • ・浸水時は、水が入ると歩きづらくなる長靴ではなくスニーカーを履く
  • ・強風時に傘をさすと転倒する危険があるため、傘は水底が見えない冠水時の探り杖として使う
  • ・緊急時のために公衆電話や固定電話の使い方を教えておく(受話器を上げない子どもが多い)

また、休日に親子で地域の防災学習センターなどに行くのもおすすめです。台風だけでなく、地震なども含めた災害の危険性と防災の大切さを親子で学ぶことができます。

台風が来る前・・・慌てないための「防災タイムライン」

続いて、台風が来る前にすべき対策についてご紹介します。お住まいの地域に台風が直撃する可能性が高まったら、事前にできる対策や準備をすること。そして、安全を確保しながら必要に応じてすみやかに避難することが重要です。

防災タイムラインを用意しておけば、慌てず対策ができる

台風接近時に役立つのが、「防災タイムライン」です。
防災タイムラインとは、「いつ・誰が・何をするのか」を記入しておくもの。

「台風が来る3日前に、お父さんと長女が避難の際に持って行く防災グッズを確認する」
「台風が来る1日前に、お母さんが、ベランダや庭に置いてあるものを家の中に入れる」
などなど、直前までにすることを記入して共有することで、慌てずに行動することができます。

東京都では、防災タイムラインを作るためのフォーマット「東京マイ・タイムライン※」を公開しています。このフォーマットは全国どこでも活用できます。タイムラインを作っておくことで防災意識の向上にもつながり、慌てずに行動ができます。家族の身を守るためにも、台風が来ることがわかった時点で、防災タイムラインを用意しましょう。

東京マイ・タイムライン
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/mytimeline/index.html

台風の前日は、外にあるものを屋内に

台風が来る前日には、窓や雨戸をしっかりと閉めることはもちろんですが、プランター・植木鉢・洗濯物など、突風で飛ばされそうなものを家の中にしまいましょう。そのままにしておくと、お隣の家の車を傷付けたり、通行人にケガをさせてしまったりする可能性があります。

自転車も突風で倒れると危険なため、あらかじめ倒しておくか風の影響がない場所に移動させましょう。

台風当日。急な突風や避難時の安全確保が重要

台風当日は、なるべく外に出ないのが一番ですが、仕事や避難で外に出ざるをえない状況も考えられます。行動時と避難時に注意すべきポイントについてご紹介します。

飛来物とドアの開閉に細心の注意を

台風通過中に一番注意したいのは飛来物です。なるべく地下を通るなど、飛来物の影響を受けにくいルートを選んで行動してください。また、強風時は車や自宅のドアの開閉にも注意しましょう。

突風でドアが勢いよく閉まり、指を挟んでしまう事故が毎年起きています。ドアの出入りの際は、できるだけ開ける幅を狭くして(人が通れる程度)、両手でドアをしっかり持ちながら出入りするように心掛けましょう。

避難の際には“足元”の安全確保を

2019年6月から、5段階の「警戒レベル」を明記して防災情報が提供されることになりました。
誰もが避難すべきなのは「警戒レベル4」と言われていますが、高齢者や幼児と同居されている方、障害をお持ちのご家族がいる方、避難所までが遠い方は「警戒レベル3」の段階で避難を始めましょう。日が暮れると、視界が悪くなり、リスクが倍増するため、なるべく明るいうちに避難所に移動しましょう。

浸水時に避難するときは、足元に注意してください。浸水によって、道路にあるマンホールや縁石、倒れた自転車が見えなくなっている可能性があります。気付かずに歩くとつまずいて転倒し、ケガをしてしまう可能性があります。傘や杖で足元を確認しながら避難しましょう。ちなみに浸水が深い場合は、水が長靴に入り込んで歩きづらくなったり、転倒する原因になったりするので、スニーカーでの避難をおすすめします。

また、台風が通過した後に災害が起こるケースもあります。2015年9月に起きた茨城県常総市の洪水は、栃木県日光市で前夜、線状降水帯により大量に降った雨が、翌朝、下流である常総市に押し寄せ、堤防を超える洪水となりました。その他、地すべりも時間差で発生することがあります。「雨風が止んだから大丈夫」と油断せず、河川・海・山など、危険なエリアにはしばらく近づかないようにしましょう。

正確な情報でリスクを回避!台風時に役立つWeb サイト

最後に台風時の情報収集についてご紹介します。台風による被害を防ぐためには、こまめな情報収集が大切です。信頼できて役立つ、おすすめのWeb サイトをいくつかピックアップしました。

Web サイト以外でおすすめなのが、自治体の防災メールへの登録。生活エリアの避難情報や危険度をピンポイントで素早く受け取ることができます。自宅や勤務先の地域はもちろん、実家がある地域の防災メールにも登録しておくと、危険が迫ったとき、ご両親に避難をすすめることもできて安心です。

また、PCやスマートフォンの操作に慣れていないご両親には、地上デジタル放送のdボタン(データ放送)を押しておくように伝えましょう。台風情報や避難情報が常に表示された状態になります。

大事な家族と自分を守るために

残念ながら、台風の発生を防ぐことはできません。
しかし、台風発生時のリスクを想定して、被害を回避するための知識を身につけたり、対策を立てたりすることはできます。

台風が増えてくるこれからのシーズン。
家族や自宅を守るために、今回ご紹介した対策をぜひ試してみてください。

 

ライター:倉本祐美加
企画・編集 児島宏明

松島康生

松島康生

災害リスク評価研究所 代表。災害リスクアドバイザー(防災危機管理)、防災計画/BCP(事業継続計画)コンサルタント。2012年 災害リスク評価研究所を設立。一般住宅や企業向けに災害危険度を調査し、防災対策をアドバイスする「災害リスク評価」といったサービスを開始。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌など、これまで200以上のメディアに出演し防災についてのアドバイスを発信している。URL:http://www.saigai-risk.com/