
40代に差し掛かると、集中力が衰えたり、身体がのぼせたり、だるさや動悸を感じるなど、身体の不調を訴え始める人がいます。あなたのその症状、ただの疲労と楽観的に捉えるのは危険かもしれません。もしかすると「男性更年期障害」にかかっているかも。
2007年に日本泌尿器科学会と日本メンズヘルス学会が「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)※男性更年期障害の正式名称」という表現を採用してから、男性の更年期障害も少しずつ知られるようになりました。
しかし、まだまだその存在を知らない人が多いため、放置して重症化してしまうこともあるようです。男性更年期障害は、原因も症状も女性の更年期とは違い、対応方法も異なります。この記事では、男性更年期障害の原因・症状・改善方法について詳しくご紹介します。
40代後半から発症する人も。男性更年期障害の原因

「更年期」とは性ホルモンの分泌が標準の状態よりも低下した時期を指す言葉。
男性の場合、ストレスに囲まれた生活環境や環境の変化がトリガーとなり更年期障害が発症します。
男性更年期障害にかかる年代として最も多いのは50代から60代。しかし、40代後半頃から症状が出始める人も少なくありません。
症状の程度にはかなり個人差があります。女性は閉経後にホルモンバランスが落ち着くと症状が軽くなっていくことが多いのですが、男性の場合は生活環境を変えるなど、大きな変化を起こさない限り症状が長期化してしまいます。
放置して重症化してしまうケースも!男性更年期障害の症状

男性ホルモンは、以下のような役割を果たしています。
男性ホルモンの働き
- ・骨や筋肉など、身体の発達を促し、免疫力や骨量を保ち、内臓脂肪を抑えて男性的な体型を作る
- ・精子を生成して性欲を高める
- ・認知能力(理解力や判断力、記憶力など)を高める
- ・皮膚のコラーゲンを維持し、皮膚の潤いを保つ
- ・動脈硬化を防ぐ
男性ホルモンが減少することで、これらの働きが弱まり、さまざまな異変が発生します。その症状は大きく「身体症状」と「精神症状」の2種類に分類できます。
身体症状
- ・倦怠感(疲れやすくなる)
- ・認知能力(理解力や判断力・記憶力など)の低下
- ・食欲不振
- ・不眠
- ・性欲の低下・勃起不全
- ・筋肉量の減少
- ・内臓脂肪の増加
- ・皮膚がたるむ
- ・口内乾燥
- ・しびれ
- ・のぼせ、ほてり、動悸
精神症状
- ・興味、意欲の減退
- ・不安、気分が落ち込む
- ・イライラする(短期で怒りっぽく自己中心的になってしまう)
男性の更年期障害はうつ病に似た症状が出ることもあります。一般的なうつ病は痩せることが多いのに対し、男性更年期障害では逆に太りやすくなるといった特徴があります。
男性更年期障害を放置すると、各器官の働きが弱まり「メタボリックシンドローム・心筋梗塞・脳梗塞・がん」といった深刻な生活習慣病にかかるリスクが高まります。放置して重症化してしまう前に早めに対策を打ちましょう。
身体や精神に異変を感じたら、まず試してほしいのが、男性更年期障害のセルフチェックができる「AMSスコア」。合計が27〜36点の場合、軽度男性更年期障害の可能性があり、37〜49点の場合は中等度男性更年期障害の可能性があり、50点以上の場合は危険信号です。
病院での治療と生活習慣の改善。男性更年期障害の改善・予防法

男性更年期障害が疑われる場合、まずは泌尿器科を受診しましょう。「男性更年期外来」や「メンズヘルス外来」などの専門外来がある病院でも問題ありません。
医師に男性更年期障害だと診断されたら、「男性ホルモンの注射や漢方薬による治療」と「生活習慣の改善」という2つの方法で症状を改善していきます。
漢方薬・男性ホルモンの注射による治療
漢方薬・注射で、減少した男性ホルモンを補います。漢方薬でよく使われるのは、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)。補中益気湯には、男性ホルモンを増やす効果があると言われています。
そのほか、さまざまな漢方薬に加え、抗不安薬や抗うつ薬を用いることもあります。漢方薬や抗不安薬、抗うつ薬に関しては保険適用での診療が可能。ホルモン補充療法は保険適用外なので、自費診療となります。医師に判断を仰ぎ、症状に合わせて適切な処置をしてもらいましょう。
「運動・食事・睡眠」がポイント。生活習慣の見直しで症状を改善
生活習慣の改善によって症状の緩和が見込まれます。
ポイントは「運動・食事・睡眠」の3つです。
- ・運動:適度な疲労感を味わうのがポイント
- 体を動かすことで筋肉が動き、それにより男性ホルモンの分泌が促進されます。運動をする際は疲れないペースでダラダラ続けるのではなく、ウォーキングの途中でスロージョギングを挟むなど、メリハリをつけながら適度な疲労感を味わうのがポイント。そのほか、バスケットボールやフットサルといった他人と競い合うスポーツもおすすめです。
- ・食事:男性ホルモンの生成に役立つ野菜とタンパク質を摂取
- お菓子やカロリーの高い外食、お酒の飲み過ぎなどは控え、栄養の豊富な野菜などを意識的に食べましょう。ニンニクやタマネギなどのネギ類・ヤマイモなどのネバネバ食品の他、アボカドなどがおすすめ。また、牛・豚・鶏などの肉類の他、魚・卵・牛乳・豆製品など、良質なタンパク質を摂取することも大切です。
- ・睡眠:良質な睡眠と規則正しい生活が改善の鍵
- 良質な睡眠をとることもとても大切。規則正しい生活リズムを意識し、寝る前はスマホなど見るのを控えて、充分な時間眠りましょう。睡眠中はリラックスして副交感神経が優位の状態となり、男性ホルモンが多く分泌されます。逆に一晩徹夜してしまうと、それから2〜3日はテストステロンが下がった状態になります。
その他、男性更年期障害になったことをきっかけに、仕事の仕方や家庭での過ごし方を見直してみても良いかもしれません。40代男性は職場で責任が重くのしかかり、心身ともにストレスを抱えてしまっていることもあるでしょう。また、家庭で気を緩められていないのかもしれません。
仕事を自分の中だけで抱え込まず、部下や同僚に任せたり、業務量を見直すなど、自分の中で働き方改革を起こす良い機会かもしれません。そして、プライベートでは自分の趣味を見つけて打ち込んだり、家族とゆっくり過ごす時間を大切にするなど、素の自分をさらけ出せる“環境”を整えることが大切です。
男性更年期障害と診断され、落ち込んでしまう人もいるかもしれません。しかし、治療と生活習慣の見直しにより、ほとんどの患者さんは男性更年期障害の症状が改善されるそうです。
症状が身体のSOSを伝えてくれたと捉え、前向きな気持ちで治療に取り組みましょう。
そして、「AMSスコア」の自己採点で自分は大丈夫だと胸を撫で下ろした人も、常に自分の身体の声に耳を傾け、ストレスをマネジメントすることが大切です。