住環境に合わせて「備蓄品・避難用品」を選ぶ!防災グッズ選びのポイントと必ず用意したい8つの道具【災害リスクアドバイザー松島康生氏監修】

さまざまな自然災害の中でも私たちが住む日本に深刻な被害をもたらす「地震」。
「東日本大地震・熊本地震・北海道胆振東部地震」など、近年発生した大地震は、各地に大きな傷跡を残しました。

こうした地震が発生するたびに各家庭での防災意識が高まっていますが、正しい防災グッズが揃えられているでしょうか?また、本当にそれで充分でしょうか?

今回は、防災のスペシャリスト、松島康生さんに「地震時に本当に役立つ防災グッズ」について伺いました。

松島康生

災害リスク評価研究所 代表 災害リスクアドバイザー(防災危機管理)、防災計画/BCP(事業継続計画)コンサルタント。1993年~ 朝日航洋株式会社(トヨタグループ)で、国や自治体向け防災コンサルタントとして、地震被害想定調査やハザードマップ、地域防災計画などの業務に従事。2011年 東日本大震災をきっかけに、これまでの技術やノウハウを民間に活かしたいと考え2012年 災害リスク評価研究所を設立。一般住宅や企業向けに災害危険度を詳細調査し、これに適した防災対策のアドバイスや研修などの一連のサービスを開始。現在はテレビ・雑誌などのメディア出演とともに立正大学の外部研究員として活躍している。
URL:http://www.saigai-risk.com/

※以下はすべて、松島さんのインタビュー内容です

 

2種類の防災グッズ。「備蓄品」と「避難用品」の違いとは

一言で「防災グッズ」といってもさまざまなアイテムがあり、大別すると「備蓄品」「避難用品」の2種類に分けられます。「備蓄品」と「避難用品」では利用シーンが大きく異なります。ここでは、ご自宅のことを考えてみてください。

  • 1.備蓄品

  • 災害時に在宅で生活を継続するために使うもの。「築年数の浅い免震住宅で、なおかつ安定した地盤の上に建てられており、津波などの被害も想定できない環境」にお住まいの場合は、自宅での生活を想定して優先的に「備蓄品」を準備しましょう。
  • 2.避難用品

  • 災害時に避難先で使うもの。「耐震面で不安がある建物や、『液状化・津波・洪水・土砂崩れ』といった二次災害の危険がある環境」にお住まいの場合は、避難所での生活を想定して優先的に「避難用品」を準備しましょう。
  •  

避難する可能性が高いのに避難用品を準備せず、備蓄品ばかり充実させていても役に立ちません。自宅の建物の状態や周辺環境からリスクを想定し、揃えるグッズの優先度を決めましょう。

防災グッズ選びの盲点。「防災セット」だけでは不十分

ネットショッピングなどで販売されている防災セットを購入して「これで安心」と満足しがちですが、それでは不十分。環境によって「備蓄品」「避難用品」と揃えるグッズが異なる他、以下のように、中には災害時に使いにくかったり、数が足りなかったりするグッズもあります。

  • ・レジャーシート
  • 座ったときにおしりが収まるだけの小さなサイズで、厚みがなく、撥水性のない素材の場合は不十分です。
  •  
  • ・加熱袋
  • 1回しか使えない袋が1セットしか入っていない場合があり、1食分では足りない恐れがあります。
  •  
  • ・三角巾
  • 腕を吊ったり包帯として使ったり、ケガの応急処置に有効ですが、事前に使用方法を学んでおかないと一般の人には使いこなせません。
  •  
  • ・ロウソク
  • 余震が続く避難場所などでロウソクを使用することは原則NG。(セットによってはライターやマッチが含まれていません)

家にある防災セットの中身を確認し、必要に応じて足りないアイテムを追加しましょう。また、防災グッズの中には、日用品でまかなえるものも多々あります。「災害時に必要なのは何か?」を知り、日用品の中から防災用として取り分けましょう。

無駄にしない「備蓄品」選びと購入のポイント

まずは、「備蓄品選び」の考え方やポイントについて解説します。「災害時に在宅で生活を継続するために必要」という視点を軸に考えましょう。

「備蓄品選び」で注意したい3つのポイント

備蓄品選びで注意すべきなのは、以下の3つのポイント。

  • ・ポイント1:家族構成に合わせる
  • 「高齢者・乳幼児・妊産婦・障がい者・ペット」など、被災時に不自由を強いられる人に合わせた準備をしましょう。(例:高齢者がいる場合、食品はゼリー飲料などの食べやすいものを多めに備蓄する)
  •  
  • ・ポイント2:住環境に合わせる
  • 例えば、マンションの高層階に住んでいる場合、災害でエレベーターが止まってしまうと地上と行き来するのも一苦労。飲食料やトイレなどは多めに備蓄しておくのがおすすめ。
  •  
  • ・ポイント3:循環型備蓄
  • 家族の人数と住環境のリスクを考慮して多めに蓄え、消費・賞味期限があるものは普段から消費します。そして、不足分は再度購入するという「循環型備蓄」をすることで、災害対策が生活の一部となり、いざという時も戸惑わずに対応できます。

6つのカテゴリから考える、災害時に必要な「備蓄品」

必要な「備蓄品」について、6つのカテゴリに分けてご紹介します。

1.水
飲料水は大人1人あたり、1日につき3リットル必要。これは炊飯など、調理に使う水も含めた必要量です。「3リットル×人数分×日数」で準備しましょう。少なくとも3日分は常時準備し、災害リスクや家族に応じて、備蓄量を増やすことが必要です。また、トイレ用として、大人1人あたり、1日につき5〜6回分の水(1回あたり5~8リットル)を準備しておきたいところ。お風呂の残り水は流さずに貯めておきましょう。※マンションの場合、配管破損等の確認が必要。

  • ・飲料水(調理用を含む)
  • ・生活用水(トイレ、手洗い)

2.食料
アレルギーや好みを考慮して、食べられるものや食べたいものを備蓄しましょう。以下のような保存の効く食品がおすすめです。

  • ・アルファ米 ※炊き上げた後、乾燥させたお米。お湯または水を注ぐだけで食べられる
  • ・レトルトおかゆ
  • ・乾麺(うどん、ラーメン、パスタなど)
  • ・缶詰パン
  • ・カップラーメン、インスタントラーメン
  • ・レトルト入りおかず
  • ・缶詰・瓶詰(調理おかず、フルーツなど)
  • ・野菜ジュース、ゼリー飲料
  • ・栄養補助食品
  • ・お菓子・甘味(チョコ、アメ、スナック)
  • など

3.照明・情報
災害時に「照明」と「情報」はとても重要。ライトとラジオは必ず準備しましょう。

  • ・LEDライト
  • ・ラジオ
  • ・電池
  • など

4.高齢者・乳幼児・ペット向けの備蓄品
高齢者・乳幼児・ペットがご自宅にいる場合は、日常使いとは別に分けておくのがおすすめ。以下の他、個別に必要なものを選んでください。

  • 【高齢者向け】
  • ・経口補水液
  • ・ゼリー飲料
  • ・高齢者用オムツ+消毒ウエットティッシュ
  • など
  •  
  • 【乳幼児向け】
  • ・粉ミルク
  • ・離乳食
  • ・紙オムツ+消毒ウエットティッシュ
  • ・簡易トイレ+トイレットペーパー
  • など
  •  
  • 【ペット向け】
  • ・ペットフード(食べ慣れたもの)
  • ・ケージ
  • ・トイレ(ペットシーツ、猫砂など)
  • など

5.保温・保冷グッズ
停電が発生するような大きな地震が発生すると、長期間にわたって空調が利用できません。真夏や真冬に発生する可能性をふまえて、保温・保冷グッズを用意しましょう。

  • 【冬季】
  • ・毛布
  • ・アルミ保温シート、ブランケット
  • ・使い捨てカイロ
  • ・手袋
  • ・簡易ストーブ
  • など
  •  
  • 【夏季】
  • ・うちわ
  • ・冷凍ペットボトル
  • ・冷却シート
  • など

6.その他、あると便利なもの
建物内への閉じ込め、浸水などのリスクをふまえて、以下のようなグッズを用意しましょう。

  • ・笛(救援用)
  • ・バール(閉じ込め防止)
  • ・土のう
  • ・スコップ
  • ・バケツ
  • ・ブルーシート
  • ・ガムテープ類
  • など

以上が災害時に必要になる備蓄品です。3つのポイント「家族構成に合わせる・住環境に合わせる・循環型備蓄」をふまえ、優先度の高いものから用意しましょう。

無駄にしない「避難用品」選びと購入のポイント

続いて、「避難用品選び」のポイントや最低限準備しておきたいものについて解説します。「災害時に避難先で使うもの」という視点を軸に考えましょう。

「避難用品選び」で注意したい2つのポイント

避難用品選びのポイントは、以下の2つ。

  • ・ポイント1:持ち運びのしやすさ
  • 避難用品は、できるだけ軽量でコンパクトなものを選びましょう。例えばライトは、備蓄用の場合は多少大きくても問題ありませんが、避難用としては手のひらに収まるコンパクトなものや、ラジオや充電器と一体型になった多機能なものがおすすめです。
  •  
  • ・ポイント2:他人と共有しにくいもの
  • 避難所での共同生活で必要になるのは「歯ブラシ・スリッパ・コンタクトレンズ・タオル」といった、他人と共有しにくいもの。「常備している薬や、乳児用の哺乳瓶・粉ミルク・離乳食・スプーン」などもこれにあたります。このような品を準備しておくことで、感染病などを防ぐと同時に精神面での健康を保てます。

4つの分類から考える、災害時に必要な「避難用品」

避難用品は以下の4つのカテゴリに分け、優先度の高いものから準備しましょう。

1.照明・情報
避難時も「照明」と「情報」の重要性は変わりません。また、家族とはぐれてしまったときの備えも必要です。

  • ・LEDライト(コンパクトなもの)
  • ・多機能ラジオ(コンパクトなもの)
  • ・電池
  • ・家族写真(はぐれたときの確認)
  • ・家族、親戚、知人の連絡先
  • ・避難地図
  • など

2.清潔・健康
洗面所など生活空間が共有となる避難所では、「清潔・健康」に関わるグッズが必要です。

  • ・歯ブラシ
  • ・コップ(口ゆすぎ用)
  • ・トイレットペーパー
  • ・マスク
  • ・コンタクトレンズ、保存液
  • ・ウエットティッシュ
  • ・常備薬、持病薬
  • ・タオル類
  • など

3.便利品
共有空間での生活を余儀なくされると、さまざまなところでストレスが発生します。少しでも快適に過ごすために、以下のようなものを準備しましょう。

  • ・ロール床マット
  • ・耳栓、イヤーパッド
  • ・アイマスク
  • ・スリッパ(紙スリッパ)
  • ・雨具、折りたたみ傘
  • ・ポリ袋
  • など

4.その他(性別・ライフステージ・ペット)
自宅ではないため、ご自身の性別や家族のライフステージに合わせて必要な備品を持ち出す必要があります。以下でご紹介するものの他、個別に必要なものをまとめておきましょう。

  • 【高齢者向け】
  • ・常用薬、持病薬
  • ・入れ歯、義歯
  • ・高齢者用オムツ
  • ・老眼鏡
  • ・杖、車椅子
  • など
  •  
  • 【乳幼児向け】
  • ・哺乳瓶、粉ミルク
  • ・離乳食、スプーン
  • ・紙オムツ、おしり拭き
  • ・おしゃぶり
  • ・絵本、おもちゃ
  • など
  •  
  • 【ペット向け】
  • ・ペットフード、エサ箱
  • ・ケージ
  • など

この他、避難所は「食料が不足している・空調が使えない」可能性が高いので、「食料保温・保冷グッズ」が必要(※備蓄品の「食料」「保温・保冷グッズ」を参照)。また、火事場泥棒に備えて、持ち出せるように貴重品をまとめておくと安心です。

「東日本大震災・熊本地震」の被災地で役立っていた8つの防災グッズ

ここからは、過去の被災地で実際に有効活用された防災グッズや、数々の調査や実験を通して私がおすすめする防災グッズをご紹介します。備蓄品・避難用品を準備する際に、必要に応じて選んでみてください。

  • 1.多機能LEDライト
  • 「ラジオ・時計・手動の発電機・スマートフォンの充電器」が一体になった多機能LEDライトは、今や防災グッズとして欠かせないアイテム。日常的にも利用でき、そのまま災害時も活躍してくれます。「充電ができない」など、低品質な製品もあるので購入の際に注意しましょう。
  •  
  • 2.分割できるLEDランタン
  • 海外のアウトドアブランドが出している、分割可能なLEDランタンはとても便利です。4つに分割してそれぞれ使えるので、食事の準備やトイレに行くときなど、1つだけ切り離して持ち運ぶことができます。
  •  
  • 3.ネックライト
  • 照明器具の中で私が最もおすすめしたいのがネックライトです。首にかけると、ハンズフリーの状態で斜め下45度あたりが照らされ、歩くときに足元が明るくなります。また、暗いところでの書類確認や読書をするときもちょうど良く、日頃から愛用しています。
  •  
  • 4.耐切創手袋(たいせっそうてぶくろ)
  • 地震の後は、割れたガラスや食器などが散乱するため、軍手での作業は非常に危険。そんなときは、刃物もつかむことができる耐切創性に優れた安全手袋が活躍してくれます。ホームセンターなどで売られていて、値段も1000円前後とお手頃。
  •  
  • 5.バール
  • 地震の揺れで建物が歪み、ドアなどが開かなくなることがあります。バールは救出用としてドアをこじ開ける、または窓ガラスを割って避難する際にも有効。自宅に置いておくと災害時に活躍します。
  •  
  • 6.大判のポリ袋(45リットル以上)
  • 大判のポリ袋は万能な防災グッズ。切れ目を入れて被れば雨合羽になる他、「簡易トイレ・足湯・毛布や服入れ」など、さまざまな使い方ができます。多めにストックしておくと災害時に重宝します。
  •  
  • 7.ストッキング
  • 女性用のストッキングは保温性に優れ、避難場所での防寒アイテムとして役立ちます。股の部分に穴を開けて赤ちゃんに被せれば全身を保温可能。窮屈な体勢が強いられる避難場所では、ストッキングを履くことで血流が促進されるので、エコノミー症候群対策にも有効です。
  •  
  • 8.レトルトのおかゆ
  • 私が最もおすすめする非常食は「レトルトのおかゆ」。「玉子・梅・鮭」など、さまざまな味があるので飽きがなく、調理も不要で、容器やスプーンがなくても食べられます。また、「水分・主食・おかず」を同時に摂取できる他、幼児や高齢者でも食べやすいという万能非常食です。
  •  
  • ※その他、以下のグッズもおすすめ
  • アルミブランケット:軽くて小さい。防寒、保温、雨よけや陽射除け、着替えやトイレ
  • 食品ラップ:皿に敷けば洗う手間が省ける。添木固定や止血にも
  • ポリタンク:飲水と生活用水で2つあると便利
  • バケツ類:消火用、食器洗い、洗濯用、トイレを流すときなど
  • 吸水性オムツ:簡易トイレ代わり
  • 針金・ロープ・ガムテープ:つなぐ、補強する
  • キャリーカート:水など重いものの持ち運びに便利
  • 石油ストーブ・カセットボンベストーブ:電気を必要とせず、湯沸かしにも活躍

住宅のリスクや家族構成を考えて“本当に役立つ防災グッズ選びを

すでに防災セットだけ買ってあるという人は、1度中を開けて「ひとつひとつ使えるかどうか、数が足りるかどうか」を考えてみましょう。そのうえで、今回解説した住宅のリスクや家族構成に合わせて新たに買う、もしくは買い足すことをおすすめします。

「あまりお金をかけられない」という方は、日用品の中から「備蓄用・避難用」を取り分けて、まとめておくだけでも災害時のストレスを緩和できるはずです。万が一の事態に備えて、今回ご紹介したグッズの中から、日用品で補えるものをピックアップし、整理しなおしましょう。

松島康生

松島康生

災害リスク評価研究所 代表。災害リスクアドバイザー(防災危機管理)、防災計画/BCP(事業継続計画)コンサルタント。2012年 災害リスク評価研究所を設立。一般住宅や企業向けに災害危険度を調査し、防災対策をアドバイスする「災害リスク評価」といったサービスを開始。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌など、これまで200以上のメディアに出演し防災についてのアドバイスを発信している。URL:http://www.saigai-risk.com/