2020.02.05

ビジネス
40代転職の実態と給与アップの鍵。退職前に確認したい「ポータブルスキル」と「仕事のみつけ方」

一般的に、40代は年収が人生の中でピークを迎えるといわれる年代。

30代までの経験や人とのつながりが実を結び、それが給料面にも反映されるときなのです。そんな40代に、さらなる給与アップを求めて転職を考える人も少なくありません。

いくつになっても挑戦を続けるのは素晴らしいこと。転職に成功し、新しい職場で活躍する人もいます。しかしその影には、転職に失敗して苦しい状況に陥る人がいるということも知っておいた方が良いでしょう。

今の職場に退職届を出す前に、改めて40代で転職する意味やリスクについて考えてみましょう。今回は「転職に向いている人 転職してはいけない人」の著者、ルーセントドアーズ代表取締役の黒田真行氏に、現代の40代転職の実態や、失敗しない転職の方法について、詳しく伺います。

 

黒田真行

ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年より、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、『人材業界の未来シナリオ』他。1989年リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。14年ルーセントドアーズを設立。「Career Release40」http://lucentdoors.co.jp/cr40/  「Can Will」https://canwill.jp/ 

※以下はすべて、黒田さんのインタビュー内容です

 

 

40代の転職で給与アップは可能か?理想と現実

転職を考える理由は人それぞれ。
職場での人間関係や経営状況に問題を感じている、または仕事のやりがいについて見つめ直すなど、十人十色の事情がありますが、その中でも給与アップを目的とした相談が私のもとには多く寄せられます。

しかし、40代転職で給与アップを実現するのは簡単ではありません。その理由としては、以下の2つのポイントが挙げられます。

  • 年収が上がる人より下がる人の方が多い

  • 40代で転職した人を、年収が「上がった人・下がった人・変わらなかった人」に分類すると、「下がった人」の割合が若干多いという調査結果があります。もちろん、給与がアップする可能性もありますが、下がる可能性も高いといえるでしょう。40代転職による給与アップは簡単なことではありません。
  • 転職に失敗し失業する可能性がある

  • 転職サイトなどで掲載されている求人の多くは年齢制限が35歳までとなっており、40歳・45歳と、5歳刻みで求人の数自体が半減していく傾向にあります。給与アップどころか、転職そのものができずに失業状態が長く続いてしまうリスクもあります。
  •  

このように40代の転職を勢いで決めるのは禁物。失敗したときのリスクが非常に大きいのが特徴です。給与ダウンや失業などの憂き目にあわないように、慎重に進めましょう。

こんな人は要注意。転職失敗者の傾向

「給与アップを目指して転職活動をしたものの、結果的に給与が下がる、または転職そのものができない」ことを「転職の失敗」と定義した場合、失敗者には大きく分けて以下の3つの傾向があります。

転職に失敗する人の3つの傾向

  • 1.需要があるスキルを持っていない方

  • 転職前の仕事が一般的に需要の少ない、もしくは需要の減っている業種や職種だとしたら……どれだけ現職でそのスキルを発揮できていたとしても、転職して苦戦する可能性がかなり高くなります。
  •  
  • 2.需要はあるが、スキルのレベルが低い方

  • 前者とは逆に、社会的に需要の大きい、もしくはこれからますます需要が高まっていく業種や職種の場合、それだけ同業者も多いということ。40代は成長性を期待される年代ではありません。成熟したスキルレベルや管理者としての確かな能力が求められるため、スキルレベルが低いと転職に失敗してしまう可能があります。
  •  
  • 3.大企業に勤めている転職経験がない方

  • これまで転職経験のない大企業勤めの人は注意が必要。会社を離れて自分と他者のスキルを比較した経験が少ない中、相対的に高い給与を得ているため、高望みしてしまう傾向があります。実際に転職活動を始めると、「自身の経験・スキルと合致していないため不採用になる」「採用には至ったが、給与が想定以上にダウンしてしまう」といった結果を招いてしまいます。

会社を辞めて転職活動を始めたものの、数百社面接を受けても就職先が決まらず、その2年後にはコンビニでアルバイト……そういう人を私は実際に何人も見てきました。

「転職できる」という前提で仕事探しを始めるのではなく、自分のスキルや経験について、しっかりと分析し直すことが大切です。転職の相談に訪れる人の中には、そうした自己分析をせず「すぐに今よりも条件の良い転職先が見つかるだろう」と思い込んでいる方もたくさんおられます。

経験を棚卸しして自分自身の「ポータブルスキル」を知ろう

自分のスキルを見直すうえでポイントになるのが「ポータブルスキル」というキーワードです。
「ポータブルスキル」とは何か、ご紹介します。

職種にとらわれない、「持ち運び可能」なポータブルスキル

「ポータブルスキル」とは、その名の通り「持ち運びできるスキル」という意味。業種や業界が変わっても“持ち運べる”……つまり、転用できる能力として、最近の転職活動で注目されています。ポータブルスキルは、その分野の専門知識・技術に加えて、「仕事の仕方」「人との関わり方」の2つ。さらに、その構成要素を分解すると以下のようになります。

「仕事の仕方」「人との関わり方」から考える、ポータブルスキルの構成要素

  • 【仕事の方(業務遂行能力)】
  • 1.課題を明らかにする力
  • 現状把握・・・課題設定に先立つ情報収集力・分析力など
  •  
  • 2.計画を立てる力
  • 計画の立て方・・・先を読み、逆算して正確なスケジューリングができる力など
  •  
  • 3.実行する力
  • 実際の課題遂行・・・役割の認識力・スケジュール管理力など
  • 状況への対応・・・柔軟な対応力・予測能力
  •  
  • 【人との関わり方(マネジメント力・コミュニケーション力)】
  • 1.社内対応(上司・経営層)
  • 上司から提案を求められる頻度、社内で期待される役割など
  •  
  • 2.社外対応(顧客・パートナー)
  • 顧客・取引先など社外対象者の数、関係の持続期間など
  •  
  • 3.部下マネジメント(評価や指導)
  • 部下の人数、指導・育成スキルなど
  •  
  • 参考:“ポータブルスキル”活用研修
    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000091180.pdf

業務遂行能力・マネジメント力・コミュニケーション力」は、どの職業にも必要とされるビジネスマンのベーススキル。40代までに培った「専門知識・技術」に加えて、これらのスキルが高ければ高いほど、転職・給与アップに成功する可能性が高くなります。

ポータブルスキルに注目すれば、現在の職種にこだわらなくても活躍できる場所を見つけられるかもしれません。これまでの仕事を振り返り、自身のポータブルスキルに気付くことで、失業のリスクを減らせる他、給与アップを実現できる可能性も見えてきます。

「仕事のみつけ方」の視野を広げる3つの選択肢

「自身のポータブルスキル」を棚卸しする他、「仕事のみつけ方」を変えてみるのも、転職に失敗しないために押さえておきたいポイント。以下の方法で転職はできないか、一度確認してみましょう。

転職を検討したときに見直したい「3つの選択肢」

  • 1.人からの誘い・ヘッドハンティング

  • わかりやすい例として挙げられるのが「ヘッドハンティング」。有能な社員であれば、会社に在籍しているうちにクライアントや関連企業から引き抜きの話があるでしょう。また、ヘッドハンティングというほど明確なものでなくても、取引先で「あなたのような人がうちにいてくれたら……」と言われたことがあるかもしれません。
  •  
  • 2.昔の上司や同僚・取引先への相談

  • 転職した過去の上司などに相談するのも良いでしょう。“都合の良い話”を求めていきなり転職エージェントに相談する前に、自分のキャリアを振り返り、過去の名刺を見直して信頼できる人に話をすることをおすすめします。その方が自分の理想に近い条件の職場にスムーズに転職できる可能性が高いでしょう。
  •  
  • 3.起業・独立

  • 40代という年齢でより高額な年収を目指すのであれば、会社に雇われるという価値観にとらわれず、独立してしまうという選択肢もあります。「自分が提供できる価値をクライアントに売る」という感覚は、独立せずとも40代を迎えた仕事のプロフェッショナルとして重要な考え方。自分の仕事に責任を持てれば、自然と企業からも求められるようになるでしょう。

転職と聞いてすぐに思い浮かぶのは「転職エージェント」ですが、その他にもさまざまなバリエーションがあるはず。今の会社に退職届を出す前に、上記の3つの方法で転職先を見つけられないか確認しましょう。

早めの判断は命取り。給与アップだけが転職の成功ではない

40代転職で給与アップを成功させるには、「40代転職は失敗する人の方が多い」という現実を踏まえ、「自身のポータブルスキルを棚卸し」して、「転職の方法や起業・独立といった選択肢」をしっかり吟味する必要があります。

また、もっとも給与アップを実現しやすいのは、「自分から“望む”よりも、他者から“求められて”次のステージに進む」という形。今の会社を辞める前に、今一度、本気で今の仕事と向き合い、しっかりとした実績を残すことによって、その選択肢をつかむことができるかもしれません。

今回の記事では「給与アップ」を転職の成功と位置付けて説明しましたが、必ずしもその価値観だけが正解ではありません。年収が多少下がっても、残業の少ない職場を選ぶことで、生活が豊かになる人がいるのも事実です。

自分に合った仕事で、長く働き、充実して生きていけることが何よりも大切。長期的な視点で仕事のあり方を改めて考えてみてはいかがでしょうか。

 

黒田真行

黒田真行

ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年より、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、『人材業界の未来シナリオ』他。1989年リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。14年ルーセントドアーズを設立。「Career Release40」http://lucentdoors.co.jp/cr40/  「Can Will」https://canwill.jp/