恋は遠い日の花火なのか

先日久しぶりに会った40代の友人(独身、女性)が、異常な程若返っており、おまけにとっーても綺麗になっていて久々に度肝を抜かれました。
聞けば、「恋をしている。」というではありませんか!
恋・・・。それは私を含め、家庭持ちの40’LIFEな皆様には遠い日の花火。
独身者でも、「恋愛とかそろそろいいわー。」と、引退宣言されている同胞もちらほら。私達は順調に「枯れ」と言う名の大人の階段を上っているのだとしみじみしていた矢先のそれは衝撃でした。

 

驚いたのは、恋が彼女にもたらせた「ファッションや髪型やお化粧方法」という変化だけじゃなく、体の内側から、細胞レベルで綺麗になっている感じがしたことです。そして、何よりも所作や話し方が女性らしくてとても色っぽい。普段仕事で、切った張ったを男性相手に繰り広げている彼女(プライベートでも完全に引きづっていた)とはまるで別人で、私は久しぶりに恋愛ホルモンの威力を目の当たりにしたのでした。

 

実際に恋愛をすると通常時にはなかなか出ないホルモンが分泌され、女性の場合は肌や髪が綺麗になったり、男性でも鬱を抑制したり、血圧やコレステロール値を下げたり、結果長生きしたりする研究結果も出ているそうですね。
また、恋愛ホルモンのひとつと言われているオキシトシンの分泌が盛んになる事で、優しさや社会性、コミュニケーション力などが上がるそうで、これは、以前に書いた「イライラしたジジイにならない為に」の「40男はもっと泣いていい」に匹敵するかなり有効なサプリではあるまいか!と、私は膝を打ちました。

 

とはいえ、既婚者は当たり前に、独身者でも、既に社会で大人なポジションを確立している我々は容易に「恋」に手を出すことができません。「血圧が下がるそうだから。」と言ってググっても売っている訳では当然にないし、若い者から「恋をしたがっているおじさん」というレッテルを貼られるのは結構なリスクです。

 

そこで、今回も登場してもらいたいのが、「人生の達人」である、我々よりさらに年上のおばちゃん達です。子供に手がかからなくなった彼女達は、仕事の終わりが見えてきてしょんぼりしている亭主を余所に、エネルギッシュで行動的でとても若々しい。それもそのはず、彼女達はジャニーズや宝塚、ヨン様やイビョンホンにちゃんと「恋」をしていらっしゃいます。私の友人男性の妻は「嵐」の熱狂的なファンで、テレビ番組をチェックし、コンサートに行ったりして毎日本当に楽しそうだと。それはそれで夫としては、家庭円満でとてもありがたい、と言っておりました。
恋をしよう!なんて言うと、我々40代おじさん世代は、すぐに「不倫」の二文字がかすめてしまいがちですが、誰も傷つけず、自身が溌剌と過ごせる術を知っているアラフィフのおばさま達はまさに人生の達人です。ミーハーだなんだとせせら笑うことなかれ。達人たちは愛(現実)と恋(夢)の政教分離が出来ている国民主権国家。おまけに元気でご機嫌で長生きなのであります。

 

「恋」で私がもう一つ思い出すのは、昔大変お世話になった方の事です。
彼はその頃60歳手前で、お子さんたちも結婚し、大きな仕事をやり終えたタイミングで、関係者を食事会に招待してくださった時の事。社会的な弱者の為にどんな大きな敵にも刃向って戦い続けてきた彼は、ダンディーだったけどいつも毅然としていて、いつも怖い顔をしていているタイプの男性でした。しかし、その日はお酒を飲み過ぎたのかいつになく柔和で、そして多分酔った勢いだと思うのですが、

 

「できるなら、もう一度恋がしたい。」

 

と言ったのです。
居合わせた私達は全員驚きました。ダンディーのご乱心かと。すると、

 

愛人が欲しいとか、つきあいたいとかではないと。
奥さんは大切だし傷つける訳にはいかないと。
ただ、若かった頃に経験した強烈な恋心をもう一度経験したいなぁ、と夢を見るようにそう言ったのでした。

 

何故そのことをいつまでも覚えているかと言えば、彼のイメージに合わない乙女チックな台詞だったことが一つ。もう一つは、その半年後に彼が突然亡くなってしまったからなのです。食事会以降会っていなかったので、「もう一度恋がしたい。」はまるで彼の遺言のように私の中に留まりました。その話を聞いたときは「何をおっしゃっているのですか!」と流してしまったのだけれど、こんなに早くこの世を去るのを知っていたら、共感したり応援したりしてあげれば良かったと、切ない後悔がいつまでも残ったからなのです。

 

それからしばらくして、私はたまたま恋愛コラムを書くようになり、男女の恋愛相談に乗ったりするようになり、「恋」や「愛」とは一体何なのかを毎日のように考えるようになります。そして、相談者の中には苦しい恋をしている人もいるし、愛の呪縛に身動きが取れなくなっている人も多く存在して、「恋愛とはなんぞや?」と、「本当に必要なモノなのか?」などと私自身も思考の迷子状態になることが度々ございます。度々ございますが、それでもやっぱり、「人を好きになる」という事は素晴らしいものなんじゃないかと、恋をして美しく優しく柔軟に成長する女性達を見るたびに、そう思うのです。

 

恋はホルモンが見せる夢であり錯覚だとしても、自己愛と表裏一体のやっかいな現象だとしても、相手を想う気持ちそのものは尊い。例え付き合えなくても、結婚できなくても、会ったり話したりすることがかなわなくても、

 

「どうか、明日も明後日も、あの人が幸せでありますように。」

 

と思える人が存在するという人生は、やはりとてつもなく美しいのではないかと。

 

もう一度妻に。同じ電車に乗る眺めるだけの人に。素敵な女優さんに。可愛いペットに。感度を上げて小さな恋心を散りばめるも一興。思想良心の自由は他人には不可侵ですから、大人の責任の範囲内で「心の中で恋を飼える」と、「枯れた50代」ではなく、元気で色気のある50代男性になれるのではないでしょうか?

川崎貴子

川崎貴子

リントス株式会社代表取締役

リントス株式会社代表取締役。1997年に女性に特化した人材コンサルティング会社ジョヤンテを設立後、1万人を超える女性をフォローしてきた。「女性マネージメントのプロ」との異名を取る。メディア取材執筆多数。婚活結社「魔女のサバト」、共働き推奨 婚活サイト「キャリ婚」(https://carricon.jp 男性完全無料)主宰。 著書に『我がおっぱいに未練なし』(https://www.amazon.co.jp/dp/4479783997 大和書房)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(http://www.amazon.co.jp/dp/4584136335 ベストセラーズ)、『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(https://www.amazon.co.jp/dp/4062729458 講談社) 、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(https://www.amazon.co.jp/dp/4862804829 総合法令出版)、『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(http://www.amazon.co.jp/dp/447979493X 大和書房)、『上司の頭はまる見え。』(http://www.amazon.co.jp/dp/476319707X サンマーク出版)がある。ブログ「酒と泪と女と女」など連載も多数。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザー。